伝説的な黒人歌手マリアン・アンダーソンは、自伝の中で数々のユーモラスなエピソードを綴っています。その一つが、テキサス州の人種隔離された駅での体験です。
隔離された駅のトイレで起こった意外な出来事
当時のアメリカ南部では、公共施設が人種によって分けられていました。しかし、自分の肌の色を理由に劣った扱いを受けることに屈しなかったアンダーソンは、白人女性専用と示された看板をあえて無視し、堂々と白人用トイレへと足を踏み入れました。
すると、そこで彼女を待っていたのは思いがけない光景でした。身なりが整ったアフリカ系アメリカ人の女性を目にした白人女性たちは、彼女が入ってきた途端、一斉に部屋から立ち去ってしまったのです。この予想外の反応に、アンダーソン自身も驚きながらも思わず笑みがこぼれたといいます。
コペンハーゲンでの「恋する猫」との出会い
もう一つの心温まるエピソードは、コペンハーゲンでの公演時に起こりました。舞台裏にいた小さな黒猫が、どうやらアンダーソンに懐いてしまったようなのです。その愛らしさに心を動かされた彼女は、この猫をアメリカへ連れて帰ることを決めました。
スウェーデンへ向かう飛行機の中で、猫はアンダーソンと伴奏者のクルト・ピーターソンの間に座り、彼女が持っていたチョコレートの箱を堪能したそうです。アンダーソンは「こんな乗客は今まで経験したことがないわ」と冗談めかして語ったといいます。
笑いに満ちた非凡な人生
こうした逸話は、差別や困難に直面しながらも、常にユーモアと優しさを失わなかったマリアン・アンダーソンの人物像を物語っています。歴史に名を刻む偉大な歌手でありながら、その人生にはこうした微笑ましい瞬間が数多くあったのです。