はい、ジェームズ・クック船長は、その歴史的な航海に天文学者を同行させていました。18世紀後半の遠洋航海において、正確な位置測定は船の安全を左右する生命線であり、天文学者は探検隊にとって欠かせない存在だったのです。
各航海に参加した天文学者
クックの第1次航海(1768年〜1771年)には、王立協会から派遣されたチャールズ・グリーンが天文学者として乗り組みました。続く第2次航海(1772年〜1775年)ではウィリアム・ウェールズがその任務を引き継ぎ、ウェールズは第3次航海(1776年〜1780年)にも再び参加しています。なお、第2次・第3次航海は2隻編成であったため、もう一方の船にもウィリアム・ベイリーという天文学者が同乗していました。
天文学者の主な役割
天文学者たちの最も重要な任務は、天体観測によって海上での船の位置を正確に特定することでした。当時、信頼できるクロノメーター(航海用精密時計)はまだ普及していなかったため、「月距離法」と呼ばれる手法が用いられていました。これは、月と恒星との角距離を測定して経度を求める方法です。一方、緯度については、太陽や北極星の高度を観測することで割り出しました。
船位測定にとどまらない科学調査
天文学者の仕事は航行の支援だけではありません。日食や月食の観測、地磁気の測定など、幅広い科学調査も担当しました。特に第1次航海の主要な目的の一つが、1769年にタヒチ島で実施された金星の日面通過の観測でした。この観測データは、地球から太陽までの距離を算出するために世界各国で収集されたものであり、クックの航海が科学史において重要な意義を持っていたことを物語っています。
このように、クックの偉大な航海は単なる地理的な探検ではなく、天文学をはじめとする科学調査と密接に結びついた学術的な事業でもあったのです。