歴史物語

コリー・テン・ブーム一家を裏切ったのは誰だったのか?――密告者ノリーの正体と動機

第二次世界大戦中、自宅にかくまって多くのユダヤ人の命を救ったオランダの時計職人、コリー・テン・ブーム。しかし1944年2月、彼女と家族はナチス当局によって突然逮捕されました。この悲劇の背景には、ある密告者の存在がありました。

密告者はナチス協力者のノリー

オランダ人ナチス・スパイであるノリー(Geesje Koopmans/ギースヘ・コープマンス)こそが、ナチス当局をテン・ブーム家の自宅兼店舗「ベーエ(Beje)」へと導いた張本人でした。この密告により、コリーをはじめとするテン・ブーム一家は逮捕され、過酷な強制収容所へ送られることとなりました。

裏切りの動機をめぐる議論

では、ノリーはなぜこのような裏切り行為に手を染めたのでしょうか。その真の動機については、以来、長年にわたってさまざまな陰謀論の的にされてきました。

しかし、最も可能性が高いとされるのは、実はノリーに特別な動機など存在せず、単なるナチスへの思想的共感、そしておそらくは金銭的な報酬が目的だったという説です。

復讐説の信憑性は低い

一方で「個人的な恨みによる復讐だった」という見方もありますが、これはかなり疑わしいと考えられます。当時、オランダ全土の地下組織やレジスタンス運動は、互いの顔や素性をほとんど知らされないまま、徹底した匿名性のもとで活動せざるを得ませんでした。つまり、特定の個人を標的にした復讐を実行することは、事実上不可能だったのです。

結局のところ、ノリーの裏切りは壮大な陰謀などではなく、戦時下における卑小な利益と思想信条に基づくものであったのかもしれません。