「離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生き残り」とは?
イギリスでは古くから、テューダー朝の王ヘンリー8世の6人の妻たちの運命を覚えるための童謡が親しまれてきました。冒頭の一節「Divorced, beheaded, died, divorced, beheaded, survived(離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生き残り)」は、6人の王妃たちがそれぞれどのような結末を迎えたのかを簡潔にまとめた、実に印象的な記憶術なのです。
一見ユーモラスなこの歌詞ですが、その裏には王妃たちの波乱に満ちた、そして多くの場合悲劇的な人生が隠されています。ここでは、歌詞の日本語訳とともに、それぞれの歴史的背景をご紹介します。
歌詞全文(日本語訳)
離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生き残り
ヘンリー8世の妻たちの人生は、なんと悲惨だったことか!
最初に嫁いだのはキャサリン・オブ・アラゴン、
スペイン出身の年増の姫君。
息が臭いなどと噂され、
髪まで薄くなってしまったとか。
続いて現れたのはアン・ブーリン、
フランス仕込みの魅惑的な淑女。
ヘンリーは彼女の首に飽きてしまい、
斧は無情にも振り下ろされた!
三番目はジェーン・シーモア、
長くは続かなかったその結婚。
そこでヘンリーはドイツの娘に白羽の矢を立て、
その名はアン・オブ・クレーヴズ。
離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生き残り
ヘンリー8世の妻たちの人生は、なんと悲惨だったことか!
ところが対面するや否や、彼女は送り返され、
王は「もううんざりだ!」と叫んだ。
次に目についたのがキャサリン・ハワード、
見るからに華やかな娘。
しかしこれも長くは続かず、
過去の素行があまりに派手すぎたゆえ!
六番目で最後の妻はキャサリン・パー。
幸運なことに、
彼女の首を刎ねようと決意する前に、
王は突然この世を去ったのでした!
6人の王妃たちの実際の運命
この歌詞は単なる冗談ではなく、歴史的事実に基づいています。各王妃の実際の結末を見てみましょう。
1. キャサリン・オブ・アラゴン――離婚
スペイン王室出身の最初の妃。兄アーサーの未亡人としてヘンリーに嫁ぎましたが、男子の後継者に恵まれず、24年の結婚生活の末に婚姻無効を宣告されました。娘は後のメアリー1世です。
2. アン・ブーリン――斬首
エリザベス1世の母。ヘンリーの熱烈な求愛を受けて2度目の妃となりましたが、男子を産めなかったことや宮廷での陰謀により、不貞・反逆などの罪で処刑されました。
3. ジェーン・シーモア――病死
待望の男子エドワード(後のエドワード6世)を出産しましたが、産後の感染症のためわずか12日後に亡くなりました。ヘンリーが「最愛の妻」として慕った唯一の妃とされています。
4. アン・オブ・クレーヴズ――離婚
プロテスタント諸国との同盟を目的に迎えたドイツの姫君。肖像画と実物のギャップに失望したヘンリーは、結婚からわずか数ヶ月で婚姻を解消しました。ただし彼女は友好的に別れ、生涯をイングランドで穏やかに過ごしています。
5. キャサリン・ハワード――斬首
アン・ブーリンの従妹にあたる若く美しい妃。しかし結婚以前の恋愛関係が発覚し、不貞の罪で処刑されました。処刑当時、まだ10代だったと伝えられています。
6. キャサリン・パー――生き残り
2度の寡婦経験を持つ知的な女性。ヘンリーの死後に再婚しましたが、出産後に亡くなりました。それでも、6人の妃の中で唯一「王妃としての地位を保ったまま」ヘンリーを看取った人物です。
まとめ
「離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生き残り」——この短いフレーズには、テューダー朝の権力闘争と宗教改革、そして一人の王の執着が絡み合った激動の歴史が凝縮されています。ユーモラスな歌い回しの裏にある悲劇を知ると、この童謡の見え方が少し変わるかもしれません。