アジアの歴史

小京都の起源は室町時代|全国に広がった京都への憧れと45の小京都

室町時代の京都は、各地の大名や国衆にとって誰もが憧れた華やかな都でした。

京都から国元へ戻った大名たちは、京都を模した地名を付け、寺社を建てて、「小京都」と呼ばれる城下町づくりを始めたのです。

そこには「京都こそ中心」という意識のもと、幕府に倣って自らの権威と力を誇示する狙いだけでなく、自分の領国に「都(みやこ)」をつくりたいという思いも込められていました。

各地に残る「小京都」

小京都と呼ばれる街は全国各地に数多くあります。高知県四万十市もその一つで、1468年、関白・一条教房が応仁の乱の戦火を避けてこの地に移り住み、京都を模して土佐の都にふさわしい街をつくりました。

街は碁盤目状に広がり、「祇園」「京町」「鴨川」「東川」など、京都を思わせる地名も今に残っています。

市域は清流・四万十川に囲まれ、その風景は京都の雰囲気によく似ています。五代106年間にわたり、土佐一条氏は戦国の乱世の中で京都文化の影響を受け続けてきました。

現在の四万十にもその面影を見ることができます。歴代の一条兼良公や土佐一条氏を祀る大規模な祭り「一条神社大祭」や、一条氏の避難所として使われた太平寺などが有名です。

一条神社(高知県)

また、中国地方で大きな勢力を誇り、たびたび上洛して幕政にも関わった大内氏が築いた山口も、小京都として名高い土地です。大内氏は室町時代初期から京都を模した街づくりを進めてきましたが、応仁の乱の際には公家たちが戦火を避けて山口へ移り住んだことで京都の文化が花開き、「西の京」と呼ばれるまでに栄えました。

今日の山口市にも、国宝・瑠璃光寺五重塔をはじめ、今八幡宮や龍福寺など貴重な寺社が数多く残り、「大内文化」の栄華が今に伝えられています。

国宝・瑠璃光寺五重塔

「小京都」を名乗るための条件

現在、「小京都」を名乗るには次の3つの条件があるといわれています。

  1. 京都に似た自然景観・町並み・風情があること
  2. 京都との歴史的な関わりがあること
  3. 伝統産業や芸能があること

この条件を満たしているのは、全国で45の都市です。

全国の小京都の都市とその特徴

「小京都」の都市特色
秋田県仙北市武家屋敷と町家が残る佐竹氏ゆかりの城下町
秋田県湯沢市佐竹南家の城下町。「秋田美人の里」。醸造業も盛ん
宮城県大崎市回遊式庭園と、京都公家・冷泉家ゆかりの学校
宮城県村田町山形と仙台を結ぶ商業都市。大店の蔵や門が残る
新潟県加茂市平安時代から桐箪笥の産地。京都・賀茂神社の領地だった
栃木県栃木市舟運で栄えた商業都市。蔵造りと白壁。堀割の鯉も名所
栃木県佐野市出流原弁天池の湧水。名水の湧く宿場町
栃木県足利市日本最古の学校「足利学校」と日本一の藤棚
茨城県古河市室町時代、足利成氏の関東における政治の拠点
埼玉県嵐山町京都の嵐山に似た渓谷と山並み。坂東武士ゆかりの地
埼玉県小川町和紙、酒造り、建具、絹など伝統産業の史跡が残る
神奈川県湯河原町万葉集に詠まれ、文人墨客が保養に訪れた名泉
静岡県森町江戸時代中期以降、古着の町として栄えた城下町
愛知県西尾市城下町の大名行列まつり。抹茶の原料・碾茶の産地
岐阜県郡上市城下町で400年間歌い踊り継がれる「郡上おどり」
三重県伊賀市江戸時代に藤堂高虎が碁盤目状に整備した城下町
長野県飯山市上杉謙信の飯山城。島崎藤村『破戒』の舞台となった寺院
富山県高岡市加賀前田家二代当主・利長の城下町。古い町並みが残る
富山県南砺市蓮如上人ゆかりの瑞泉寺の寺内町。石畳の景観と曳山祭り
福井県大野市戦国武将・金森長近による碁盤の目状の城下町
福井県小浜市大陸と京都を結ぶ交通の要衝。寺社や仏像が多い
京都府亀岡市明智光秀の丹波亀山城跡。保津川渓谷の美しさ
兵庫県豊岡市出石城跡と町家。石灯籠と巽櫓
兵庫県篠山市京都へ通じる西国街道沿いの宿場町・城下町
兵庫県たつの市武家屋敷と白壁の蔵。揖保川そうめんの伝統産業
岡山県津山市津山城跡と石垣の武家屋敷。寺社仏閣も多い
岡山県高梁市備中松山城と武家屋敷。商家資料館などの史跡が点在
広島県尾道市江戸時代は北前船の寄港地。豪商たちが多くの寺を建立
鳥取県倉吉市城下町の白壁土蔵と赤瓦。打吹玉川、関金温泉
島根県松江市古代出雲文化と神話の発祥地。松江城
島根県津和野町朱色の鳥居が連なる太皷谷稲成神社。堀の鯉も有名
山口県萩市1604年に毛利氏が萩城を開いた36万石の城下町
山口県山口市瑠璃光寺五重塔が象徴する「西の京」。大内氏ゆかりの地
高知県安芸市武家屋敷の景観。三菱創業者・岩崎弥太郎の生誕地
高知県四万十市公家が応仁の乱で移り住み、京都を模した町をつくった
愛媛県大洲市加藤氏6万石の城下町。2004年に木造天守を復元
福岡県朝倉市秋月城跡。黒田官兵衛の孫・長興が治めた城下町
佐賀県小城市京都を模した町づくり。祇園川には蛍が舞う
佐賀県伊万里市伊万里焼など肥前磁器の出港地として栄える
大分県杵築市高台に武士、谷に商人が暮らす独特の町並み
大分県日田市江戸時代、幕府の天領として栄える。豪商の遺構が残る
熊本県山鹿市明治の芝居小屋「八千代座」は国の重要文化財
熊本県人吉市鎌倉時代以来の寺社や仏像が数多く残る
宮崎県日南市石垣が続く武家屋敷の飫肥地区が有名
鹿児島県南さつま市七つの名勝庭園と整然とした武家屋敷が残る

これらの都市は、自治体の協働組織である「全国京都会議」に加盟することで、小京都を名乗ることができます。各自治体は日本ならではの伝統的な景観を大切に保全しながら、それぞれの土地の伝統文化を今日まで受け継いでいるのです。