戦場の最前線に立ち、敗北で失望のどん底にあった兵士たちを鼓舞し、勝利へと導いた少女がいました。それがジャンヌ・ダルクです。
しかし彼女は、やがて敵国に捕らえられ、王に裏切られ、若くして処刑されてしまいます。あまりにも悲劇的な生涯でした。
天使の声に耳を傾け、その実現のために奮闘したジャンヌ・ダルクは、何を思い、どう生きたのでしょうか。
天使の声を聞いた少女

イングランドとフランスは、王位継承問題をめぐって長きにわたり争い続けていました。後に「百年戦争」と呼ばれるこの戦いで、フランスはイングランドの猛攻を防ぐ手立てなく、敗北を重ね、国家存亡の危機に瀕していました。
そんな時代、フランスの片田舎の村に一人の少女が生まれます。「ジャンヌ」と名付けられたその少女は、12歳のときに人生を変える出来事に出会います。
ひとりで歩いていたところ、天使と二人の聖女が目の前に現れたのです。
「あなたは神に選ばれました!この国を守り、王子を王位につけなさい!」
あまりの美しさに、ジャンヌはその場で涙を流しました。
それから4年後、16歳になったジャンヌは、皇太子シャルル7世への謁見を求めます。もちろん許可を得るのは容易ではありませんでしたが、ジャンヌはある戦いにおけるフランスの敗北を見事に予言し、謁見の許可を勝ち取ります。
シャルル7世は、ジャンヌが本当に「神の真の使者」なのかを試そうと考えます。他人を玉座に座らせ、自らは家臣の中に紛れて様子をうかがうことにしたのです。
しかしシャルル7世の思惑に反して、ジャンヌは見事に偽物を見抜きました。
「殿下!私は神の導きのもと、ここに参りました。あなたが王位につくことをお約束します。どうか私に軍勢をお与えください!」
シャルル7世がジャンヌを疑う理由は、もはやありませんでした。
ジャンヌが変えたフランスの未来!

ジャンヌが参戦すると、フランス軍はたちまち攻勢に転じます。当初は彼女の参戦に懐疑的だった指揮官たちも、最前線で陣頭指揮を執る姿や、負傷しても立ち上がり続ける精神力に、次第に心を惹かれていきました。
消極的だったフランス軍の戦略も一新され、連戦連勝を重ねていきます。
そしてジャンヌが指揮を執ってわずか4ヶ月後、シャルル7世は念願の王位に就くことができたのです。
しかし、シャルル7世の戴冠後、ジャンヌ率いるフランス軍の勢いは次第に陰りを見せ始めます。王位を得たシャルル7世にとって、功績を残したジャンヌはもはや必要のない存在になっていたのかもしれません。
そしてついに、その日が訪れます。
参戦から1年余り後、ジャンヌは敵国に捕らえられてしまったのです。
ジャンヌ、最期の時!
イングランド軍に援軍が到着し、ジャンヌ率いるフランス軍は撤退を余儀なくされました。味方の兵士を安全に逃がすため、ジャンヌは自らしんがりとなり、敵と戦い続けます。
しかしそれも長くは続かず、ついには敵に包囲され、矢を受け、捕らえられてしまいました。
シャルル7世なら身代金を支払ってジャンヌを救うことができました。
しかし、彼はそうしませんでした。
その後、ジャンヌはイングランド側による無慈悲な裁判にかけられ、19歳という若さで火刑に処されたのです。
ジャンヌの活躍によって、劣勢だった「百年戦争」は大逆転し、フランスはイングランドを撃退することに成功しました。しかし、フランスを救ったジャンヌは、最悪のかたちでフランスに殺されてしまったのです。
戦争終結後、ジャンヌの名誉回復裁判が開かれ、「無罪」が宣告されました。
幼い頃に出会った天使とともに現れた聖女のように、ジャンヌもまた「一人の聖人」として数えられるようになったのです。
まとめ
「神のお告げを聞いた」というような荒唐無稽な話を信じざるを得なかった当時のフランス軍が、それほどまでに追い詰められた状況にあったことは事実です。
ジャンヌは、ごく普通の村の少女にすぎませんでした。十代の少女が、天使が現れたからというだけで、命を懸けて戦争に赴くものでしょうか。
「天使は本物なのか」「ジャンヌの言葉は本物なのか」——それを信じたジャンヌ自身とフランス軍の思いこそが、勝利を導いたのだと私は思います。
ジャンヌはお告げの通り、シャルル7世を王位につけることに成功しました。これでジャンヌの役割は終わりだったのかもしれません。だとすれば、ジャンヌが本当に天使に出会い、お告げを聞いたのは事実だったとも言えるでしょう。
実際、彼女のお告げは王位継承までのことであり、それは現実のものとなったのです。