「漢民族(漢代中国)の社会では、奴隷制度がローマほど重要ではなかった」という見方がよく見られますが、この前提自体が正確であるとは言えません。
前提そのものに誤りがある
奴隷制は、漢代中国とローマ帝国の双方において広く存在し、経済的にも大きな意義を持つ制度でした。むしろ、古代世界の多くの地域において、奴隷制は社会構造の中核をなす普遍的な要素だったのです。「片方の文明では奴隷制が軽微だった」という描像は、歴史的事実と一致しません。
漢とローマ、それぞれの奴隷制
漢代中国には、国家が所有する官奴婢と、個人が所有する私奴婢という形態があり、家内労働や手工業、農業など幅広い分野で活用されていました。一方、ローマでは大土地所有(ラティフンディウム)における農業労働や鉱山開発、家事労働など、奴隷労働が経済の基盤を支えていました。
差異はあるが「重要性」の違いではない
もちろん、時代や地域によって奴隷制の性質や規模、供給源(戦争捕虜、債務、犯罪刑罰など)には差異がありました。しかし、こうした変種の存在は認めつつも、「漢代中国では奴隷制がローマよりも重要性を欠いていた」と結論づけることはできません。両文明とも、奴隷制は古代社会に深く組み込まれた中心的な制度だったのです。