ムガル帝国の皇帝アクバルの宮廷には、多方面で卓越した才能を発揮する9人の人物が仕えていたことで知られています。彼らは後世しばしば「9つの宝石」と称されますが、実はこの呼び名には興味深い背景があります。
アクバルの宮廷に集まった9人の逸材
アクバル帝(在位1556年〜1605年)の治世には、学者、詩人、音楽家、行政官、武将など、さまざまな分野の俊英が宮廷に集いました。賢者として名高いビルバルや、伝説的な音楽家タンセン、財政改革で知られるトーダル・マルなど、今日までその名が語り継がれる人物も少なくありません。
「ナヴァラトナ」という言葉の本来の意味
ところが歴史的に見ると、アクバルの宮廷の9人が当時から一貫して「ナヴァラトナ(Navratna)」と呼ばれていたわけではありませんでした。
「ナヴァラトナ」という言葉は、サンスクリット語で「nava(9)」と「ratna(宝石)」を組み合わせた語です。本来この用語は、ヒンドゥー教の祭り「ナヴラートリ(Navratri)」にゆかりのある9つの天体宝石、すなわちインド占星術において太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星など九曜に対応するとされる9つの貴石を指すものとして使われてきました。
まとめ
アクバルの宮廷に仕えた9人の有能な人材は、その輝かしい才能になぞらえて「宝石」と表現されるようになりましたが、「ナヴァラトナ」という言葉自体は、もともと宗教的・占星術的な文脈で9つの宝石を指す用語だったのです。時代を経て両者が結び付けられ、現在ではアクバルの9人の家臣を指す通称として広く親しまれるようになりました。