突然ですが、クイズです。歴代アメリカ大統領46人のうち、弁護士資格を持っていたのは何人でしょうか?
「アメリカ大統領は戦争の英雄か弁護士が多い」と言われますが、実際の割合はどうなっているのか、データを整理してみました。
結論:約6割が弁護士出身
歴代46人の大統領のうち、弁護士として活動した経験があるのは27人(約59%)に上ります。ただし、時代によって大きな変化があります。
時代別の弁護士出身大統領の割合
| 時代区分 | 対象代数 | 弁護士出身 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 独立〜南北戦争(1〜16代) | 16人 | 13人 | 約81% |
| 南北戦争〜第二次世界大戦(17〜32代) | 16人 | 9人 | 約56% |
| 第二次世界大戦以降(33〜46代) | 14人 | 5人 | 約36% |
独立から南北戦争までは極めて高い一方、第二次世界大戦以降は大きく低下しています。これはアメリカ社会の変容を反映しており、独立〜第二次大戦までは産業資本家出身の大統領はいませんでしたが、戦後はブッシュ親子やドナルド・トランプのような実業家出身者が台頭してきました。
副大統領から昇格したケースを除くと?
副大統領から昇格した7人のうち弁護士資格保持者は3人。純粋に選挙で選ばれた37人のうち24人(約65%)が弁護士資格を持っており、割合はさらに高まります。
「戦争の英雄」は4人のみ
ジョージ・ワシントン、アンドリュー・ジャクソン(弁護士資格あり)、ユリシーズ・グラント、ドワイト・アイゼンハワーの4人。37人中4人なので約11%です。
弁護士+戦争の英雄で27人(約73%)。「大統領は戦争の英雄か弁護士が多い」という説は、概ね正しいと言えます。
弁護士出身の歴代アメリカ大統領 一覧
以下に弁護士資格を持つ歴代大統領のプロフィールをまとめました。
第2代 ジョン・アダムズ

- 生年:1735年
- 出身:マサチューセッツ州
- 学歴:ハーバード大学卒業
第3代 トーマス・ジェファーソン

- 生年:1743年
- 出身:バージニア州
- 学歴:ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業
第4代 ジェームズ・マディソン

- 生年:1751年
- 出身:バージニア州
- 学歴:プリンストン大学卒業
第5代 ジェームズ・モンロー

- 生年:1758年
- 出身:バージニア州
- 学歴:ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業
第6代 ジョン・クィンシー・アダムズ

- 生年:1767年
- 出身:マサチューセッツ州
- 学歴:ハーバード大学卒業
第7代 アンドリュー・ジャクソン

- 生年:1767年
- 出身:サウスカロライナ州
- 学歴:ソールズベリーで法律を学ぶ(独学に近い形で弁護士資格取得)
第8代 マーティン・ヴァン・ビューレン

- 生年:1782年
- 出身:ニューヨーク州
- 学歴:大学には進学せず、連邦判事の下で6年間法律を修行
第10代 ジョン・タイラー

- 生年:1790年
- 出身:バージニア州
- 学歴:ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業
第11代 ジェームズ・ポーク

- 生年:1795年
- 出身:ノースカロライナ州
- 学歴:ノースカロライナ大学卒業
第13代 ミラード・フィルモア

- 生年:1800年
- 出身:ニューヨーク州
- 学歴:大学卒業せず、判事の書記として法律を学ぶ
第14代 フランクリン・ピアース

- 生年:1804年
- 出身:ニューハンプシャー州
- 学歴:ボウディン大学卒業
第15代 ジェームズ・ブキャナン

- 生年:1791年
- 出身:ペンシルベニア州
- 学歴:ディキンソン大学卒業
第16代 エイブラハム・リンカーン

- 生年:1809年
- 出身:ケンタッキー州
- 学歴:正規の学校教育はほぼ受けておらず独学。イリノイ州議会議員在職中に法律を学び弁護士資格取得
第19代 ラザフォード・B・ヘイズ

- 生年:1822年
- 出身:オハイオ州
- 学歴:ハーバード・ロースクール卒業
第20代 ジェームズ・ガーフィールド

- 生年:1831年
- 出身:オハイオ州
- 学歴:ウィリアムズ大学卒業
第21代 チェスター・アーサー

- 生年:1830年
- 出身:バーモント州
- 学歴:ブラウン大学卒業
第22・24代 グロバー・クリーブランド

- 生年:1837年
- 出身:ニュージャージー州
- 学歴:大学卒業せず、ニューヨークの法律事務所で働きながら法律を学ぶ
第23代 ベンジャミン・ハリソン

- 生年:1833年
- 出身:オハイオ州
- 学歴:マイアミ大学(オハイオ州)卒業
第25代 ウィリアム・マッキンリー

- 生年:1843年
- 出身:オハイオ州
- 学歴:アレゲニー大学中退(南北戦争従軍のため)
第27代 ウィリアム・ハワード・タフト

- 生年:1857年
- 出身:オハイオ州
- 学歴:イェール大学卒業、シンシナティ法科大学院卒業
第28代 ウッドロウ・ウィルソン

- 生年:1856年
- 出身:バージニア州
- 学歴:プリンストン大学卒業
第30代 カルビン・クーリッジ

- 生年:1872年
- 出身:バーモント州
- 学歴:アマースト大学卒業
第32代 フランクリン・ルーズベルト

- 生年:1882年
- 出身:ニューヨーク州
- 学歴:ハーバード大学卒業、コロンビア・ロースクール卒業
第37代 リチャード・ニクソン

- 生年:1913年
- 出身:カリフォルニア州
- 学歴:デューク大学ロースクール卒業
第38代 ジェラルド・フォード

- 生年:1913年
- 出身:ネブラスカ州
- 学歴:ミシガン大学卒業、イェール・ロースクール卒業
第42代 ビル・クリントン

- 生年:1946年
- 出身:アーカンソー州
- 学歴:イェール・ロースクール卒業
第44代 バラク・オバマ

- 生年:1961年
- 出身:ハワイ州
- 学歴:ハーバード・ロースクール卒業
なぜアメリカ大統領に弁護士が多いのか?
政治家に弁護士が多いのはアメリカに限った話ではなく、日本でも多くの国会議員が弁護士出身です。そもそも政治家の仕事は「立法=法律を作ること」なので、法律の専門家である弁護士が多いのは自然な流れと言えます。
アメリカ独自の「ロイヤー(Lawyer)」制度
日本では弁護士・検察官・裁判官は別資格ですが、アメリカではこれらすべてが「Lawyer(ロイヤー)」という同一資格のキャリアパス上にあります。そのため、歴代大統領には弁護士だけでなく、元検事や元判事も多く含まれます。
落選しても「戻れる」職業である強み
弁護士は資格ビジネスであり、選挙で落選しても元の職業に戻りやすいというメリットがあります。一方、会社員が落選すれば再就職が必要です。この「リスクの低さ」も、弁護士が政治に参入しやすい理由の一つです。
それでもなお偏りが強いアメリカ大統領の出自
第39代ジミー・カーター(原子力エンジニア出身)を除けば、歴代大統領は全員が文系出身です。レーガンのように俳優出身の例外もいますが、弁護士以外ではケネディ家・ブッシュ家・ルーズベルト家のような資本家一族のバックアップを受けた者、あるいはトランプのような自ら資本家として成功した者に限られます。
「弁護士+資本家階級+戦時の英雄」この3カテゴリーだけで、選挙で選ばれた37人中36人を占めます(唯一の例外はジミー・カーター)。
補足:ジミー・カーターという「例外」
カーターは南北戦争以来100年ぶりの南部出身大統領でもあり、まさに例外中の例外と言えます。
近年の傾向:資金力が必須条件に
近年は大統領選に莫大な資金が必要となり、貧しい家庭出身者が大統領になるのは一層困難になっています。読み書きから法律まで独学でマスターしたリンカーンのような例外を除けば、高学歴かつ選挙資金を調達できる家柄・人脈が必須となっています。裏を返せば、現代の大統領の出自は、それ以外の人が活躍できないアメリカ社会の縮図とも言えます。
それでもなお、ブッシュ親子、ドナルド・トランプと、暴走気味の大統領が資本家出身ばかりなのは皮肉な事実です。