「アメリカ合衆国議会は二つの議会に分かれている」という表現を目にすることがありますが、これは正確ではありません。アメリカ合衆国議会は、二つの別個の議会が存在するわけではなく、二院制(両院制)の立法府です。つまり、ひとつの議会の中に、「上院(Senate)」と「下院(House of Representatives、代議院)」という二つの院が設けられているのです。
なぜ二院制が採用されたのか
1787年の憲法制定会議において、建国の父たちが二院制を採用した背景には、大きく分けて二つの理由があります。
1. 大妥協(コネチカット妥協)による対立の解消
当時、人口の多い州と少ない州の間で、議会の構成方法をめぐって激しい対立がありました。
- バージニア案:人口に比例して各州の議席数を決めるべきだと主張(人口の多い州に有利)
- ニュージャージー案:州の大小にかかわらず、すべての州に同数の議席を与えるべきだと主張(人口の少ない州に有利)
この対立を解消したのが「大妥協」です。その結果、下院は各州の人口に比例して議席が配分され、上院は州の大小にかかわらず各州に2議席ずつ与えられることになりました。
2. 権力の抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)
建国の父たちは、権力が一箇所に集中することを強く警戒していました。立法権を二つの院に分けることで、互いに牽制し合い、性急な法律の成立や多数派による専横を防ごうとしたのです。また、下院議員の任期が2年であるのに対し、上院議員の任期は6年と長く設定されており、短期的な世論の動きと長期的な視点の両方を立法に反映させる仕組みにもなっています。
まとめ
アメリカ合衆国議会は「二つの議会」ではなく、上院と下院からなるひとつの二院制議会です。この制度は、州の人口格差という現実的な問題への妥協と、権力の分散による民主主義の防衛という理念の、両方を反映したものなのです。