北米の歴史

アメリカ合衆国憲法の「私たち国民(We the People)」は誰が書いたのか?その意味と背景

憲法前文に刻まれた「私たち国民」という言葉

アメリカ合衆国憲法に登場する「私たち国民(We the People)」という言葉には、合衆国のすべての市民が含まれます。この言葉は、憲法の冒頭にあたる前文(Preamble)に記されており、憲法全体の基本理念と目的を簡潔に示す重要な役割を担っています。

前文は次のような言葉で始まります。

「われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらと子孫の自由のもたらす恩恵を確保するために、アメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確立する。」

この言葉を書き入れたのは誰か

「私たち国民」という表現を最終的に文章として仕上げたのは、1787年のフィラデルフィア制憲会議において前文の起草を担当したガバヌーア・モリス(Gouverneur Morris)であるとされています。ただし、この言葉が体現する思想そのものは、ジェームズ・マディソンやジョージ・ワシントンをはじめとする建国の父たち(ファウンダーズ)が共有していたものであり、憲法制定に関わった多くの人々の総意によるものです。

「私たち国民」に込められた理念

「私たち国民」という言葉を選んだことには、深い意味があります。それは、政府の権力と正当性は、統治される者=国民の同意から生まれるという、いわゆる「人民主権」の考え方を明確に示しているのです。言い換えれば、政府は国民に奉仕するために存在するのであって、その逆ではないということです。

さらに、「私たち国民」という言葉は、憲法が単なる法律文書にとどまらず、民主主義、平等、個人の権利といった、国家のアイデンティティと価値観の中核をなす原理の生きた具現化であることを、後世の人々に思い起こさせる役割も果たしています。