州間高速道路システム創設の背景
米国の州間高速道路システム(Interstate Highway System)が最初に構想された最大の理由は、国家防衛(National Defense)でした。
冷戦下における国防上の必要性
冷戦時代、ソ連による攻撃という脅威に直面していた米国は、軍隊や装備を迅速かつ大規模に移動させる手段を必要としていました。そこで、全国を網羅する高速道路網が国防政策の一環として提案され、これが州間高速道路システム構想の出発点となりました。
軍事要件を反映した設計思想
この道路システムの設計と建設には、軍事的な要件が色濃く反映されていました。具体的には以下のような点です。
- 戦車などの重量車両でも通行できるよう、高い耐荷重性能を持つ橋梁や路盤を採用したこと。
- 特定の区間が攻撃や災害で使用不能になった場合に備え、迂回可能な代替ルートを確保できるネットワーク構成としたこと。
- 航空機の緊急着陸帯として利用できる直線的で長い区間を設けたこと。
1956年の連邦援助高速道路法
こうした構想は、1956年に成立した「連邦援助高速道路法(Federal-Aid Highway Act of 1956)」によって具体化しました。この法律により、正式名称を「州間・防衛高速道路システム(National System of Interstate and Defense Highways)」として建設が開始されました。
当時のアイゼンハワー大統領自身、1919年に経験した大陸横断車両部隊の移動の遅さや、第二次世界大戦中に目撃したドイツのアウトバーンの軍事的・経済的な有効性から、高速道路網の重要性を強く認識していたと言われています。
民間にもたらされた波及効果
国防目的で始まったこのプロジェクトですが、完成後は物流の効率化、通勤の利便性向上、郊外の開発、観光産業の拡大など、民間経済にも計り知れない恩恵をもたらし、現代アメリカ社会の基盤となりました。