北米の歴史

アメリカを第一次世界大戦へ引き込んだのは何だったのか?――「ツィンメルマン電報」の衝撃

アメリカ参戦の決定打となった「ツィンメルマン電報」

アメリカが第一次世界大戦に参戦する直接のきっかけとなったのは、1917年に発覚した「ツィンメルマン電報(Zimmermann Telegram)」です。この秘密外交電報の暴露は、それまで中立を保っていたアメリカの世論を一変させ、対独開戦への道を開くことになりました。

電報の内容――ドイツとメキシコの秘密同盟提案

この電報は、当時のドイツ帝国外相アルトゥール・ツィンメルマン(Arthur Zimmermann)が、駐メキシコのドイツ大使宛てに送信した極秘文書でした。その内容は、アメリカに対抗するためのドイツ・メキシコ間の軍事同盟を提案するという、非常に危険なものでした。

具体的には、「もしアメリカがドイツに宣戦布告した場合、メキシコはドイツ側について参戦せよ」という呼びかけであり、その見返りとして、メキシコが米墨戦争(1846年~1848年)で失ったテキサス、ニューメキシコ、アリゾナなどの領土を取り戻せることを約束していました。

イギリスによる傍受と解読

ところが、この極秘電報はイギリスの情報機関によって傍受・解読されてしまいます。当時、大西洋横断通信ケーブルがドイツ領内を通っていなかったため、ドイツの外交電報はイギリス経由で送られており、これが傍受の決定的な隙となりました。イギリス政府は解読した内容をアメリカ政府に提供し、ドイツの裏工作を暴露しました。

アメリカ世論の激変と対独宣戦布告

1917年3月初旬に電報の内容が新聞で公表されると、アメリカ国内には激しい怒りと反ドイツ感情が一気に広がりました。「遠く離れたヨーロッパの戦争に関与すべきではない」という孤立主義的な空気が強かったにもかかわらず、自国の裏をかこうとするドイツの陰謀が明るみに出たことで、国民の意識は大きく変わったのです。

こうした世論の高まりを受け、ウィルソン大統領率いるアメリカ政府は1917年4月6日、ドイツに対して正式に宣戦布告を行いました。

補足:無制限潜水艦作戦という背景要因

なお、アメリカの参戦要因としては、ツィンメルマン電報以外にも重要な背景があります。ドイツが1917年初頭に再開した「無制限潜水艦作戦」により、民間人を含む多くのアメリカ人が乗る船舶が攻撃され、犠牲が出ていたことも、開戦へと追い込む大きな圧力となっていました。ツィンメルマン電報は、そうした緊張が高まる中での「決定的な引き金」となったといえるでしょう。