1990年「合衆国対アイヒマン」事件の概要
事件名: 合衆国対アイヒマン事件(United States v. Eichman、1990年)
結論: 米国最高裁判所は、国旗の焼却が憲法修正第1条によって保護される象徴的表現に該当すると認定し、国旗冒涜行為を処罰する連邦法(国旗保護法)を違憲として無効としました。この判決は、前年のテキサス州対ジョンソン事件(1989年)で示された法理を再確認するものです。
背景
テキサス州対ジョンソン事件(1989年)
グレゴリー・リー・ジョンソンは、1984年にダラスで開催された共和党全国大会の際、ロナルド・レーガン政権の政策に抗議するため、ダラス市庁舎前で星条旗を焼きました。彼はテキサス州法に基づき逮捕・有罪判決を受けましたが、この問題は最終的に最高裁まで争われ、最高裁は国旗焼却を禁止する州法を違憲と判断しました。
国旗保護法の制定とアイヒマン事件
ジョンソン事件の判決を受け、連邦議会は1989年、国旗冒涜行為を全国的に処罰する国旗保護法を制定しました。しかし、この法律に反対する活動家たちは、発効直後に抗議として星条旗を焼却し、ショーン・アイヒマンらは逮捕・起訴されました。この事件はやがて最高裁に持ち込まれることになります。
最高裁の判断
- 最高裁は5対4の評決により、国旗保護法を違憲とし、テキサス州対ジョンソン事件で確立された法理を再確認しました。
- ウィリアム・ブレナン判事が執筆した多数意見は、国旗の焼却が一部の人々を不快にさせるものであっても、憲法修正第1条が保護する象徴的表現に含まれると論じました。
- ブレナン判事は、国家統一の象徴として国旗を守りたいという政府の利益だけでは、表現の自由を制限する正当な理由にはならないと強調しました。
- 裁判所は、憲法修正第1条が物議を醸す表現や不人気な表現までも保護すること、そして特定の集団を不快にさせる可能性を理由に表現を抑圧すれば、言論に対して許容しがたい萎縮効果をもたらすと指摘しました。
影響
- 本判決により、国旗の焼却は憲法修正第1条のもとで保護される象徴的表現であることが確立されました。
- 国旗焼却は不敬だとして制限・禁止すべきだとする意見と、正当な抗議・表現手段だと擁護する意見が対立しており、今日でも議論の的となっています。
- 国旗冒涜禁止のための憲法修正案が議会で繰り返し提案されてきましたが、いずれも成立には至っていません。
- 本件は現在も、表現の自由の範囲や政府による象徴的表現の規制能力をめぐる議論において引用されています。