イギリス憲政史を語る上で欠かせない三つの文書――マグナ・カルタ(1215年)、権利の請願(1628年)、権利章典(1689年)――は、近代立憲主義の礎を築きました。これらの文書が打ち立てた原則は、後のアメリカ合衆国憲法および権利章典(修正条項)の起草にも深い影響を及ぼしています。本記事では、各文書の要点と、アメリカ憲法への具体的な影響をわかりやすく解説します。
マグナ・カルタ(1215年)
マグナ・カルタは、「王といえども法に従い、誰も法の上に立たない」という法の支配の原則を確立した歴史的文書です。主な内容は以下の通りです。
- 国王も法に服し、誰も法の上に立たないという原則の確立
- 適正な法手続(デュー・プロセス)と公正な裁判を受ける権利の規定
- 財産権の保障
権利の請願(1628年)
権利の請願は、マグナ・カルタ以来の伝統的な権利と自由を再確認し、王権の濫用を抑えることを目的とした文書です。主な内容は以下の通りです。
- マグナ・カルタで示された歴史的な権利・自由の再確認
- 適正手続と公正な裁判を受ける権利の原則の強化
- 拷問や残虐で異例な刑罰の禁止
権利章典(1689年)
名誉革命を経て制定されたイングランド権利章典は、議会政治の基盤を固める重要な文書です。主な内容は以下の通りです。
- 議会が法律を制定する権限と、君主がこれを遵守する義務の確認
- 議会における言論の自由の制度化
- 政府に対して苦情の救済を求める請願権の保障
- 不当な拘禁から個人を守るヘイビアス・コーパス(人身保護)の理念に基づく自由の保障
アメリカ合衆国憲法への影響
これら三つの文書で確立された原則は、アメリカ合衆国憲法の起草に多大な影響を与えました。権力分立、抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)、そして個人の権利の保護といった、アメリカの統治体制の中核をなす理念は、いずれもこれらの歴史的文書にその源泉を持っています。
具体的には、次のような対応関係が見られます。
- マグナ・カルタ → 政府が適正な法手続なしに個人の生命・自由・財産を奪うことを禁じる、修正第5条および修正第14条の適正手続条項
- 権利章典 → 言論の自由と政府への請願権を保障する修正第1条
- 権利の請願 → 残虐で異常な刑罰を禁止する修正第8条
このように、マグナ・カルタ、権利の請願、権利章典の三文書は、「個人の自由」と「限定された政府」という、アメリカ合衆国憲法の核心をなす思想の形成において、極めて重要な役割を果たしたのです。