アメリカの歴史を振り返ると、建国の父たちの多くが近年、奴隷制との関わりについて批判的に再評価されるようになりました。そうした議論の中で「では、廃奴主義者とはみなされない人物は本当に存在するのか?」という問いが生まれます。その最も明確な答えとして挙げられるのが、ジェファーソン・デイヴィス(Jefferson Davis)です。
ジェファーソン・デイヴィスとは何者か
ジェファーソン・デイヴィス(1808年〜1889年)は、南北戦争期に南部諸州が結成したアメリカ連合国(南部連合)の初代にして唯一の大統領を務めた政治家です。在任期間は1861年から1865年までで、ミシシッピ州選出の合衆国上院議員や陸軍長官を歴任した経歴を持つ、当時の南部を代表する政治指導者でした。
奴隷制と州の権利の熱心な擁護者
デイヴィスは奴隷制を正当な制度とみなし、その維持を強く主張したことで知られています。同時に彼は「州の権利(States' Rights)」を掲げ、連邦政府による各州への介入に断固として反対しました。彼にとって奴隷制は南部経済の基盤であるだけでなく、南部社会の秩序を支える不可欠な制度であると信じられていたのです。
南北戦争における南軍の最高指導者
1861年、奴隷制をめぐる対立が頂点に達し、南部諸州が相次いで連邦から脱退すると、デイヴィスはアメリカ連合国の大統領に就任しました。南北戦争(1861年〜1865年)では南軍(連合国軍)の総帥として北部(合衆国)と戦い抜きましたが、戦争は南部の敗北に終わり、連合国は崩壊しました。
「裏切り者」としての歴史的評価
戦後、デイヴィスは一時逮捕され、反逆罪で起反逆罪で起訴されました(後に釈放)。今日でも多くのアメリカ人にとって、彼は合衆国への裏切り者であり、奴隷制維持の象徴とみなされています。廃奴主義者どころか、その正反対の立場を最後まで貫いた人物こそがデイヴィスであり、冒頭の問いに対する最も分かりやすい答えと言えるでしょう。