ヨーロッパの歴史

「ブルータス、お前もか」――カエサルの最期の言葉に秘められた歴史の謎

史上最も有名な「最期の言葉」

ジュリアス・カエサルが元老院で陰謀者たちの手によって暗殺された際に発したとされる、このあまりにも有名な一言。

「ブルータス、お前もか」――カエサルの最期の言葉に秘められた歴史の謎

従来、この言葉はマルクス・ユニウス・ブルートゥスに向けられたものだと考えられてきました。ブルートゥスの母セルウィリアはカエサルの長年にわたる愛人であり、ブルートゥス自身がカエサルの実の息子ではないかとさえ囁かれていました(ただし、生年の時系列からすると、その可能性は低いとされています)。

物語には矛盾がある

時の流れをたどってみましょう。カエサルは自ら終身独裁官を名乗り、あらゆる権力を一手に掌握して共和政を形骸化させました。これに対し、マルクス・ブルートゥスはカッシウスやその他の元老院議員たちと共謀し、独裁官打倒の計画を進めていました。そして紀元前44年3月15日、カエサルはローマ元老院で何度も刃を突き立てられ、命を落としたのです。

ここで重要な問題が浮かび上がります。カエサルは、ブルートゥスが陰謀者の一味であることをすでに知っていたのです。つまり、この言葉がマルクス・ブルートゥスに向けられたものだとすれば、「お前もか」という驚きはまったく成立しなくなります。では、カエサルは一体誰に対してこの言葉を口にしたのでしょうか?

もう一人の「ブルートゥス」

有力な候補として挙げられるのが、デキムス・アルビヌス・ブルートゥスです。彼もまた陰謀計画に加わっていた一人でしたが、同時にカエサルから特別に寵愛されていた人物でもありました。信頼していた若者が自分を裏切ったという絶望――「お前もか」という言葉の真髄は、むしろ彼にこそふさわしいのかもしれません。

本当の言葉はギリシャ語だった?

さらに興味深いことに、古代ローマの歴史家スエトニウスの記録によれば、カエサルが実際に口にしたのは「Kai sú, teknon(お前もか、子供よ)」というギリシャ語だったとされています。しかも、この表現の解釈にも二つの説が存在します。問いかけだったとする説と、叫び声だったとする説です。

では、結局誰への言葉だったのか?

誰にも分かりません。それこそが、2000年以上経った今も人々の想像力を掻き立ててやまない、この言葉の魅力なのでしょう。

「ブルータス、お前もか」――カエサルの最期の言葉に秘められた歴史の謎