ヨーロッパの歴史

「シモニー」という言葉の由来をご存じですか?〜奇跡を金で買おうとした魔術師シモンの物語

「シモニー(聖職売買)」という言葉について、スペイン王立アカデミー(RAE)は「秘跡や準秘跡などの霊的なもの、あるいは聖職禄・聖職恩給のように霊的なものに不可分に結びついた現世的なものを、意図的に売買すること」と定義しています。この言葉の由来となったのは、使徒ペテロとパウロから「奇跡を行う力」を金で買おうとした魔術師シモンという人物でした。ペテロは彼を一蹴し、こう言い放ちます。

あなたの金は、あなたもろとも消えてなくなれ。神からの賜物が金で買えるなどと考えたのだから。

魔術師シモンとは何者だったのか

シモンはナザレのイエスと同時代に活躍し、その最大のライバルとも目された預言者的な存在です。後世にはグノーシス主義の創始者の一人とみなされ、手品のような技を「奇跡」と称して信奉者を集めていたと伝えられています。

さて、シモンという男がおり、長きにわたり町で魔法を操り、サマリアの人々を驚かせ、「偉大なる者」であると自称していた。身分の上下を問わず人々は彼に耳を傾け、「これぞ神の偉大な力を持つ者なり」と語っていた。それは、長い間、彼の魔術に驚嘆させられ続けていたからである。——使徒行伝より

人類初の「飛行」伝説と悲劇的な最期

神話に登場するダイダロスとイカロス父子を別にすれば、シモンは史上初めて空を飛ぶことに成功した人間――そしてその実演の最中に命を落とした人物――ということになります。自らがメシアであることを証明すべく、彼はペテロの前で「自分も天へ昇れる」と主張し、なんと生身のまま宙へ舞い上がったのです。ところが、その傲慢な姿を見たペテロが全能の神に彼への懲罰を祈ると、シモンは不思議な力に引き寄せられるように地上へ墜落して果てたといいます。

「シモニー」という言葉の由来をご存じですか?〜奇跡を金で買おうとした魔術師シモンの物語

もうひとつの死にまつわる伝承

シモンの最期については、さらに奇妙な異聞も残されています。彼は宿敵(イエス)に倣って、「自分も土の中に葬られ、三日後に復活してみせる」と豪語したのだとか。……もちろん、復活を待つ人々は、今もなお待ち続けていることになっています。