ドイツ語は、インド・ヨーロッパ語族に属するゲルマン語派の中でも西ゲルマン語群に分類される言語です。大きく「高地ドイツ語」(標準的な文語ドイツ語を含む)と「低地ドイツ語」という二つの方言グループによって構成されています。現在では、ドイツ、オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルクをはじめ、フランスのアルザス=ロレーヌ地方やイタリアの南チロル地方などでも話されています。
古代・中世・近代――三つの時代を経た言語
高地ドイツ語と低地ドイツ語は、いずれも三つの時代を経て発展してきました。すなわち、12世紀以前の「古代」、12世紀から15世紀までの「中世」、そして15世紀以降の「近代」です。
古くからバイエルン方言やアレマン方言など、さまざまな方言が生まれました。これらは総称して「上部ドイツ語」と呼ばれています。中世の文献の多くはこの上部ドイツ語で書かれ、その形式が広く普及したことが、今日の共通ドイツ語の基礎となりました。さらに宗教改革の時代には、マルティン・ルターをはじめとする改革者たちがドイツ語を積極的に使用し、言語の統一と普及に大きく貢献しました。
高地ドイツ語
1100年頃までの高地ドイツ語は「古高地ドイツ語」と呼ばれ、文学的な規範を持たない方言の集合体でした。現在の標準ドイツ語の基礎となったのは、ルターが聖書翻訳に用いた中部ドイツ語に近い言葉であるとされています。
また、中央・東欧に定住したアシュケナージ系ユダヤ人の言語であるイディッシュ語も、高地ドイツ語グループに属します。14世紀、ユダヤ人離散(ディアスポラ)の始まりとともに形成されたと考えられています。
低地ドイツ語
低地ドイツ語には低地フランク語が含まれ、これが後にオランダ語とフラマン語へと発展しました。現在、オランダ語はオランダ本国のほか、南アフリカ(アフリカーンス語として)やスリナムでも話されており、フラマン語はベルギーの主要言語の一つです。
書き言葉としてのドイツ語の確立
ドイツ語が文章語として姿を現したのは16世紀初頭のことですが、今日のような標準的な形が定着したのは18世紀半ばになってからでした。1901年には統一された正書法体系「ドイツ語正字法(Rechtschreibung der deutschen Sprache)」が採択され、以来、数多くの改訂版が出版されています。
世界で話されるドイツ語
世界にはおよそ1億人のドイツ語話者が存在します。その内訳は、ドイツに8,000万人以上、オーストリアに約700万人、スイス北部に約400万人、アルザス=ロレーヌ地方に約150万人、ルクセンブルクに約30万人です。ドイツ語は世界で6番目に多く話されている言語とされています。
まとめ
ドイツ語は、ゲルマン民族の長い歴史とともに育まれてきた言語です。多様な方言から出発しながらも、ルターによる聖書翻訳や正書法の統一といった節目を経て、今日では約1億人が話す国際的な言語へと発展しました。ドイツ語の歴史をたどることは、ヨーロッパの文化と言語の歩みを理解することにもつながるでしょう。