兵士の名誉、驚異的な勇気、そして自殺的とも言える極秘任務
1940年9月、ポーランド軍将校ヴィトルト・ピレッキは、占領下ワルシャワでの検問にあえて身をさらして逮捕され、ナチス・ドイツの強制収容所KLアウシュヴィッツへと送り込まれた。鉄門をくぐった瞬間、彼は囚人番号「4859」となった。
これは捕虜としての移送ではない。祖国への愛国的使命を果たすため、彼は自らポーランド将校の軍服を脱ぎ捨て、縞模様の囚人服に袖を通したのだ。史上まれに見る、自発的な「地獄への潜入」であった。
死の機械と化した収容所で、抵抗運動を組織した男
ナチスが強制収容所を大量虐殺の死の機械へと変えていく中、ピレッキはその内部で秘密の抵抗組織を立ち上げた。
生き延びることが唯一の目的となっていた囚人たちの中で、彼は希望と戦う意志を呼び起こし続けた。そして、この世の地獄のど真ん中から発せられた悲痛な救援の叫び――彼の報告書は、有刺鉄線の向こう側、外部へと届けられた。しかし、その恐るべき内容にもかかわらず、救いの手が差し伸べられることはなかったのである。
西側諸国はホロコーストを止められたのか
もし連合国がピレッキの報告に真剣に耳を傾けていたなら、歴史は変わっていたのだろうか。そもそも、彼の任務には成功の可能性があったのか。本作は、読者にこうした痛切な問いを投げかける。
『オホートニク(志願者)』は、これまで知られていなかった資料や目撃者の証言に基づいて描かれる、ポーランドの英雄の物語である。全世界が知るべき、真実の記録だ。
ソ連のプロパガンダによって覆い隠されてきた、戦争の衝撃的な実像がここに甦る。
皮肉なことに、戦後の共産主義政権下でピレッキの名は長くタブー視され、その功績は半世紀以上にわたり闇に葬られてきた。1948年、彼は共産党政権によって処刑された。その実像が世界に知られ始めたのは、ごく最近のことなのである。