『ザ・フェデラリスト』全85篇の最終回となる第85篇において、アレクサンダー・ハミルトンは、新憲法に対して今後提起されうるであろう反対論を先回りして予見し、それらに一つひとつ答えています。ここでは、その主要な論点を整理して紹介します。
1. 連邦政府に過大な権限が与えられるという懸念
ハミルトンは、憲法はむしろ連邦政府の権限と責任を慎重に定義することで、その権力を制限していると主張しました。さらに、新体制の下でも各州は依然として大きな権限を保持し続けると指摘し、「中央集権化への不安」を払拭しようとしました。
2. 憲法が専制(暴政)をもたらすという懸念
これに対してハミルトンは、憲法には権力分立や抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)といった専制を防ぐための安全装置が組み込まれていると説明しました。加えて、最終的には選挙プロセスを通じて人民自身が政府を統御する力を持つことを強調しています。
3. 憲法が民主的でないという批判
ハミルトンは、下院も上院も人民の代表によって構成される以上、この憲法は十分に民主的な制度であると反論しました。また、大統領は議会そのものからではなく、選挙人団を通じて選出される仕組みになっており、国民の意思が反映されるとも指摘しています。
4. 憲法は実際には機能しないだろうという懸念
ハミルトンは、憲法が健全な統治原理に基づいている限り、実務においても有効に機能すると確信していました。その裏付けとして、連邦政府に十分な権限を与えなかったために機能不全に陥った連合規約の失敗例を挙げ、強い中央政府の必要性を訴えています。
結論――批准への呼びかけ
こうした一連の反駁を踏まえ、ハミルトンは、この憲法こそアメリカ合衆国の統治のために提案された中で最良の計画であると結論づけました。彼は、国家が強く効果的な政府の下で前進していけるよう、憲法の批准を国民へ熱く呼びかけたのです。