ローマ時代のイギリスにおける水供給の実態
「ローマ人はどのようにしてイギリスにきれいな水をもたらしたのか」という問いに対する答えは、意外なものかもしれません。実は、ローマ人がイギリスに清潔な水を大規模にもたらしたという確固たる歴史的証拠は、存在しないとされています。
帝国各地で栄えた水道網
ローマ帝国は、その広大な領土の多くの地域において、高度な技術を駆使した水道(アクアダクト)網や水利施設を建設しました。首都ローマをはじめとする各都市では、遠方の水源から水を運ぶ壮大な水道橋が造られ、公衆浴場や噴水、そして家庭への給水を支えていました。この水道技術は、ローマ文明を象徴する偉業の一つとして知られています。
ブリテン島には建設記録がない
しかしながら、こうした本格的な水道網がブリテン島(現在のイギリス)に建設されたという記録は残っていません。ローマ支配下のブリテンでは、バース(Aquae Sulis)のような温泉地における浴場施設など、限定的な水の利用は行われていたと考えられますが、大陸で見られるような大規模な水道システムの存在を裏付ける証拠は見つかっていないのです。
つまり、ローマ人の優れた水道技術は帝国の他の地域では輝かしい成果を上げましたが、イギリスにおいては、清潔な水を広く供給することはなかった――これが現在の通説となっています。