安全保障理事会における常任理事国の拒否権
国連安全保障理事会は、国際平和と安全の維持を主な責務とする中核的な機関であり、武力行使の承認、経済制裁の発動、平和維持活動(PKO)の設立など、強力な権限を有しています。しかしながら現実には、この理事会は常任理事国5カ国――アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国――が持つ「拒否権」によって、しばしば機能不全に陥っています。
拒否権とは、常任理事国がたった1カ国でも反対すれば、他のすべての理事国が賛成していたとしても決議案を否決できる制度です。この仕組みにより、国連が紛争の解決や紛争の予防に向けて行動を起こすことが極めて困難になるケースが少なくありません。
具体例:2014年のクリミア危機
代表的な事例として挙げられるのが、2014年のクリミア併合です。ロシアによるクリミア併合を非難する安全保障理事会の決議案に対し、当該国であるロシア自身が拒否権を行使しました。その結果、国連はウクライナに対するロシアの攻撃を食い止めるための実効性ある措置を講じることができませんでした。
このように、常任理事国の拒否権は、各国が自国の利益を守ることを優先でき、それが国連の掲げる「平和と安全の促進」という使命を損なうことにつながり得ます。拒否権制度は、国連の紛争解決能力における最大の障害の一つと言えるでしょう。