ベルサイユ条約は「軍隊の維持」を完全に禁止したのか?
よく誤解されがちですが、1919年に締結されたベルサイユ条約は、ドイツが軍隊を一切持つことを禁止したわけではありません。実際には、ドイツは一定規模の国防軍(ライヒスヴェーア)の維持を認められていました。ただし、その規模や装備には極めて厳しい制限が課されていたのです。
条約で定められた主な軍事制限
陸軍は10万人まで
ドイツ陸軍の兵力は最大10万人に制限されました。第一次世界大戦中に数百万規模の動員を行ったドイツにとって、これはごくわずかな規模です。しかも、将校・下士官を含めてこの10万人枠に収めなければならず、将来の増強につながる予備兵力を育成することが意図的に困難になるよう設計されていました。
空軍の全面禁止
ドイツが航空部隊を持つことは全面的に禁止されました。第一次世界大戦で航空機が軍事的に重要な役割を果たしたことを受け、連合国はドイツの再軍備の中核となりうる空軍の創設を許さなかったのです。
海軍の大幅な縮小
海軍についても大型艦の建造が禁じられ、保有を許された艦艇は旧式の小型艦に限定されました。さらに、潜水艦(Uボート)の保有も禁止されています。
その他の制限
これらに加えて、徴兵制度の禁止(志願制のみ)、戦車・重砲・毒ガスといった攻撃的兵器の保有禁止、ラインラント地方の非武装化、参謀本部の解散なども定められました。
なぜこれほど厳しい制限が課されたのか
連合国、とりわけフランスにとって最大の目的は、ドイツが再び侵略戦争を起こすことを防ぐことにありました。第一次世界大戦で国土と人命に甚大な被害を受けたフランスとしては、ドイツの軍事力を恒久的に弱体化させることが国家安全保障上の死活問題だったのです。
しかし、こうした屈辱的な条約の内容はドイツ国民に強い反発と復讐心を植え付けることになりました。後のナチス政権による再軍備宣言や第二次世界大戦の勃発につながる一因となったと指摘する歴史家も少なくありません。