独立宣言の一節――人民による政府変更・廃止の権利
ご質問の一節は、1776年7月4日に採択されたアメリカ独立宣言(United States Declaration of Independence)の第二段落にある有名な言葉です。原文は次の通りです。
When any form of government becomes destructive of these ends, it is the right of the people to alter or to abolish it, and to institute new Government, laying its foundation on such principles and organizing its powers in such form, as to them shall seem most likely to effect their Safety and Happiness.
日本語訳すると、以下のようになります。
「いかなる形式の政府であっても、これらの目的を破壊するようになったときには、人民がそれを変更し、または廃止して、新しい政府を樹立することは正当な権利である。その際、人民は自らの安全と幸福をもたらすうえで最も有望と思われる原理をその基礎に据え、最も適切と思われる形態にその権力を組織するものとする。」
「これらの目的」とは何か
この一節の直前には、宣言全体の核心となる次の言葉が置かれています。
「すべての人間は平等に創られ、造り主によって、譲ることのできない権利を与えられている。その中には生命、自由および幸福の追求が含まれる。これらの権利を保障するために、人間の間に政府が設けられる。政府は被統治者の同意に基づいてその正当な権力を得る。」
つまり「これらの目的」とは、生命・自由・幸福の追求といった自然権を保障することを指します。政府とは国民の権利を守るための手段にすぎず、その本来の役割を果たさなくなったとき、人民はそれを変える権利を持つ――これがこの一節の主張です。
起草者トマス・ジェファソンと思想的背景
独立宣言の起草を主導したのは、後に第3代大統領となるトマス・ジェファソンです。この一節には、17世紀イギリスの哲学者ジョン・ロックの社会契約論や抵抗権(革命権)の思想が色濃く反映されているとされます。
ロックは『統治二論』(1689年)の中で、政府が人民の信託に背いた場合、人民は革命によってそれを打倒できると論じました。ジェファソンはこの思想を継承し、イギリス王ジョージ3世による支配からの独立という行動の正統性を理論的に裏付けたのです。
歴史と現代への影響
この「革命権」の思想は、その後の歴史に多大な影響を与えてきました。
- フランス人権宣言(1789年):「人民が抑圧に抵抗すること以外に、政府の圧制に対する手段を持たないとき、抵抗は最も神聖な権利であり、最も不可欠な義務である」と宣言されました。
- 19世紀以降の独立運動・民主化運動:ラテンアメリカ諸国の独立や各国の憲法制定など、数多くの場面で参照されてきました。
- 世界人権宣言(1948年):国連で採択されたこの文書にも、その精神は受け継がれています。
現代においても、この一節は「政治権力の正当性は人民の側にある」という民主主義の基本原理を示すものとして、世界中で引用され続けています。
まとめ
「いかなる政府形態であっても、これらの目的が破壊的になったとき、変更または廃止し、新しい政府を設立するのは適切な人々ですか?」という問いに対する答えは、「はい、それこそが人民の正当な権利(革命権)である」ということになります。政府は人民のために存在し、人民の同意によって成り立つ――この独立宣言の理念は、250年近く経った今も民主主義社会の礎であり続けています。