答えは「反ユダヤ主義(アンチセミティズム)」です。
反ユダヤ主義とは何か
反ユダヤ主義とは、ユダヤ人やユダヤ教に対して向けられる偏見・憎悪・差別の総称です。個人的な嫌悪にとどまらず、社会的な排斥や制度的な差別、さらには暴力や虐殺にまで発展してきた点に大きな特徴があります。
中世ヨーロッパにおける迫害の起源
反ユダヤ主義の歴史は非常に古く、その起源は中世ヨーロッパにさかのぼります。キリスト教が社会の中心であった当時、ユダヤ人は宗教的な理由から「異質な存在」とみなされ、迫害の対象となりました。
加えて、金銭取引に関わることが多かったことから生まれた経済的な嫉妬や恨み、「血の中傷」と呼ばれる根拠のないデマ、疫病の流行をユダヤ人のせいにする風評なども差別を助長しました。その結果、ゲットーへの強制居住、地域からの追放、集団暴動(ポグロム)といった悲劇が何世紀にもわたって繰り返されてきました。
近代以降の変容
19世紀に入ると、宗教的な差別は次第に人種的な差別へと形を変えていきます。ユダヤ人が信仰を変えても逃れられない「民族的・人種的な特徴」を持つとする考え方が広まり、1870年代のドイツでは「Antisemitismus(反セム主義)」という言葉自体が政治運動のスローガンとして用いられるようになりました。
ホロコースト――反ユダヤ主義の極点
こうした長い歴史の流れは、20世紀のナチス・ドイツのもとで最も悲惨な結末を迎えます。ヒトラー政権はユダヤ人を「劣等人種」と規定し、1935年のニュルンベルク法による市民権の剥奪、1938年の「水晶の夜」での暴行や略奪を経て、ついにはヨーロッパ中のユダヤ人の組織的な絶滅へと進んでいきました。
このホロコーストにより、およそ600万人ものユダヤ人がナチス政権によって殺害されました。反ユダヤ主義が最も恐るべきかたちで結実した出来事といえます。
なぜ今も学び続けるべきなのか
反ユダヤ主義は過去のものになったわけではなく、現代においても世界各地に根強く残っています。ホロコーストに至るまでの長い歴史を学ぶことは、偏見や差別がどのように育ち、いかに深刻な悲劇をもたらしうるかを理解するうえで欠かせません。正しい用語を知るという一見単純な問いは、歴史の教訓と向き合うための第一歩となるのです。