1154年、二人の運命的な出会い
イングランド王ヘンリー2世とトマス・ベケットが初めて出会ったのは、1154年のことです。同年、ヘンリー2世はイングランド王として正式に戴冠しました。その後まもなく、王はカンタベリーの助祭長(アークディーコン)を務めていたトマス・ベケットと知り合うことになります。
ベケットの才能を見抜いたヘンリー2世
ヘンリー2世は、ベケットの聡明さと卓越した行政手腕に深く感銘を受けました。王はすぐさま彼を大法官(チャンスラー)に任命します。大法官とは、当時の王政において最も権威があり、大きな影響力を握る要職の一つでした。この抜擢こそが、二人の密接な関係の始まりとなりました。
出会いのその後に
この運命的な出会いから数年後の1162年、ヘンリー2世はベケットをカンタベリー大司教に任じます。ところが、大司教となったベケットは次第に教会の権益を擁護する立場を強め、かつての盟友である王との対立を深めていきました。対立はついに決定的となり、1170年にはカンタベリー大聖堂での悲劇的な事件へと発展します。
こうして見ると、1154年の出会いは、単なる人材登用の場面にとどまらず、中世イングランド史における最も有名な「王権と教会の対立」の物語の幕開けだったと言えるでしょう。