ヨーロッパの歴史

世界強国の鍵は歩兵か海軍か?アルフレッド・セイヤー・マハンの海上権力論

答え:いいえ、マハンが重視したのは「海軍」でした

アルフレッド・セイヤー・マハン(Alfred Thayer Mahan、1840年〜1914年)は、アメリカ合衆国の海軍士官にして軍事史家です。彼が主張したのは、世界強国への鍵は強力な海軍(海上権力)であるという考え方でした。歩兵の規模や陸上兵力の大きさではなく、制海権を握る能力こそが、国家の繁栄と国際的な影響力を左右すると論じたのです。

マハンによれば、強大な海軍を持つ国は自国の利益を守り、必要に応じて世界中へ軍事力を投射することができます。この発想こそが、20世紀初頭の大国戦略を形づくる基盤となりました。

マハンの「海上権力史観」とは

マハンは1890年の著書『海上権力史論(The Influence of Sea Power upon History)』において、海洋支配が国家の運命を決定づけるという理論を体系的に展開しました。主な論点は以下の通りです。

  • 制海権の重要性: 海洋を支配する国は、通商路を守り、世界中の紛争地へ迅速に力を届けられる。
  • 商業と海軍の不可分な関係: 海外貿易による富の蓄積には、それを守る強力な艦隊が不可欠である。
  • 歴史的実証: イギリスが大英帝国を築き上げられたのは、強大な海軍による海洋支配があったからだと分析した。

後世への多大な影響

マハンの理論は世界各国の政策に大きな影響を与えました。セオドア・ルーズベルト政権下のアメリカは大海軍建設を推し進め、日本でも佐藤鉄太郎らがマハンの思想を取り入れて帝国海軍の戦略思想に反映させました。さらに、第一次世界大戦前の英独間の建艦競争の一因となったとも言われています。

まとめ

したがって、「世界強国の鍵は強力な歩兵である」という説明は誤りです。マハンにとって国家の偉大さを支えるのは、強力な海軍による海上権力であり、これこそが国益を守り、世界規模で影響力を及ぼすための基盤だと彼は確信していたのです。