ヨーロッパの歴史

西半球の国はドイツに促されて米国と戦うのか?――ツィンメルマン電報の真実

メキシコ:アメリカに最も近い「西半球の国」

第一次世界大戦中、ドイツは遠く離れた北米の国、メキシコに目を付けました。メキシコはアメリカ合衆国と長い国境を接する、西半球で最も米国に近い隣国です。

当時のメキシコは、1846年から1848年にかけて行われた米墨戦争(メキシコ・アメリカ戦争)で国土の約半分を失ったばかりでした。テキサス、ニューメキシコ、アリゾナなどの広大な領土を奪われたメキシコ国内には、対米感情として強い恨みが残っていました。

ドイツが仕掛けた「ツィンメルマン電報」とは

この状況を好機と見たドイツは、メキシコの失地回復への願いを利用しようと考えました。1917年1月、ドイツ外相アルトゥール・ツィンメルマンは、駐米ドイツ大使宛てに極秘電報を送信します。その内容は、「アメリカが連合国側として参戦した場合、メキシコはドイツ側に立ってアメリカと戦え。見返りとして、ドイツはメキシコが失った領土の回復を支援する」というものでした。

しかし、この電報はイギリス情報部によって傍受・解読され、まもなくその内容はアメリカ政府の手に渡ります。「ドイツが自国への攻撃を他国に唆していた」という事実が明るみに出ると、アメリカの世論は一変し、反独感情が一気に高まりました。

結末:メキシコは参戦せず、アメリカは大戦へ

メキシコ政府はドイツの提案を一時検討しましたが、軍事的にも経済的にも米国に対抗できる力はなく、最終的に参戦を断念しました。一方、電報の暴露は決定打となり、1917年4月、アメリカは第一次世界大戦への参戦を宣言します。

こうして、ドイツがメキシコを通じてアメリカを牽制しようとした「ツィンメルマン電報事件」は、皮肉にもアメリカの参戦を促す結果となったのです。