エルメスの幼少期
エルメスは、最高神ゼウスと、ティタン神族アトラスの娘マイアとの間に生まれた子です。彼はアルカディア地方のキュレネ山にある洞窟で誕生しました。母マイアは、嫉妬深いことで知られるゼウスの正妻ヘラに見つかることを恐れ、我が子を密かに隠して育てたといわれています。
生まれながらの天才児
エルメスは、神話の中でも屈指の早熟な子供でした。音楽と詩の才能を生まれつき備えており、なんと生まれて数時間のうちに言葉を話し、歩き出したと伝えられています。
同時に、彼には悪戯好きな一面がありました。神々や女神たちに trick を仕掛けて楽しむのが大好きで、この性格は後に数々の有名な逸話を生むことになります。
エルメスの有名ないたずら
アポロンの牛を盗んだ事件
エルメスの最も有名な悪戯といえば、まだ赤ん坊だった頃にアポロンの飼う牛の群れを盗み出した逸話です。これに気づいたアポロンは激怒し、ゼウスにエルメスへの裁きを求めました。ところがゼウスは、息子の悪戯をむしろ面白がり、罰することを拒んだのです。
ちなみに、この一件の後、エルメスは亀の甲羅を使って世界初の竪琴(リラ)を作り、それをアポロンに贈って和解したという物語も残っています。
ヘファイストスの道具を盗んだ逸話
また別の時には、鍛冶の名手ヘファイストスの道具を盗み出したこともあります。ヘファイストスは卓越した技術を持つ職人であり、彼の道具は非常に価値のあるものでした。盗難に気づいたヘファイストスは激怒し、ゼウスに道具の返還を要求します。しかしゼウスはこれを拒否し、「自分自身で取り戻す方法を見つけるように」と告げたといいます。
神々の伝令としての役割
こうした悪戯好きな性格とは裏腹に、エルメスは神々にとって欠かせない重要な存在でもありました。彼は神々の伝令として、オリュンポスと人間の世界の間を行き来し、メッセージを運ぶ役割を担っていました。
さらに、旅人の守護者・案内人としての顔も持ち、その圧倒的な速さと身軽さで多くの人々から親しまれました。商業の神として信仰を集めたのも、この移動や交流をつかさどる性質によるものです。
エルメスのシンボル「ケーリュケイオン」
エルメスの伝統的なシンボルは、ケーリュケイオン(双蛇の杖)と呼ばれるものです。これは、2匹の蛇が巻き付いた杖の形をしており、平和と繁栄の象徴とされています。また、医学の象徴としても知られ、現代においても医療関連の紋章などにその姿を見ることができます。