ヨーロッパの歴史

なぜピロクテーテスはトロイア戦争で置き去りにされたのか?その理由を解説

トロイア戦争で英雄ピロクテーテスが取り残された理由

ギリシャ神話のトロイア戦争において、ヘラクレスの弓を受け継いだ弓の名手・ピロクテーテスが同盟軍から置き去りにされた背景には、大きく分けて二つの出来事が関係しています。

1. 毒蛇に噛まれ、悪臭を放つ傷を負った

トロイアへ向かう途中、ピロクテーテスはレムノス島に立ち寄りました。そこで彼は毒蛇――神々が送り込んだ水蛇であるとも伝えられています――に噛まれてしまいます。この傷は化膿して絶えず膿が流れ出し、耐え難い悪臭と激痛を伴う悲惨なものでした。

その強烈な臭いと苦しみのあまりの呻き声は、共に航海していた兵士たちにとって大きな負担となりました。ギリシャ軍の指導者たちは、彼が遠征の妨げになると判断し、わずかな物資だけを残してレムノス島に彼を置き去りにしたのです。

2. 女神アテナの怒り(呪い)

もう一つの重要な要因は、女神アテナの怒りです。多くの伝承では、この毒蛇の一撃自体が神々による罰であったとされています。例えば、ピロクテーテスがアテナの聖域に足を踏み入れたことへの報い、あるいはヘラクレスの火葬の場所を明かしたことに対する懲らしめだったと語られることもあります。

さらに、トロイアを守護するとされる木像「パラディオン」の略奪をめぐる冒涜事件のように、ギリシャ勢の行動には神々の逆鱗に触れる出来事が相次ぎました。こうした神意への背きが、ピロクテーテスの悲劇的な運命に影を落としていたと考えられています。

予言によってもたらされた再合流

興味深いことに、ピロクテーテスをめぐる状況は神話の版本によって細部が異なります。ある伝承では、神託が「ヘラクレスの弓なくしてはトロイアは陥落しない」と予言したことが物語の鍵となっています。

このため戦争が長引く中、オデュッセウスとアキレウスの子ネオプトレモスはレムノス島へ赴き、ピロクテーテスと彼の弓を取り戻そうとしました。こうして彼はギリシャ軍に復帰し、その弓はついにトロイア陥落の決定打となるのです。

まとめ

ピロクテーテスの受難と、その後のギリシャ軍への再合流は、単なる挿話ではなく、トロイア戦争に関する古典ギリシャ物語の中で重要な位置を占めるエピソードです。英雄でさえ神々の意思や仲間の判断によって見捨てられうるというこの物語は、後世の文学や戯曲――ソフォクレスの『ピロクテーテス』など――にも大きな影響を与え続けています。