ヨーロッパの歴史

古代ギリシャ人は胃を生命の中心と考えていた?心臓中心説の真実

古代ギリシャ人の生命観:胃ではなく「心臓」

結論から言えば、古代ギリシャ人が胃を生命の中心と考えていたというのは誤りです。彼らはむしろ、心臓こそが生命の中心であると信じていました。

アリストテレスの心臓中心説

哲学者アリストテレス(紀元前384年〜前322年)は、心臓が知性・感情・魂の座であると主張しました。彼の根拠は次のようなものでした。
・心臓は体内で最も温かい器官である
・胎児において最初に形成される器官である
・血管系の中心に位置している
これらの理由から、心臓が生命活動を統べる根源とみなされたのです。

脳中心説との対立

ただし、すべてのギリシャ思想家が心臓中心説を支持していたわけではありません。医師アルクマイオンやヒポクラテス派、そしてプラトンは、感覚や思考の座は脳にあるとする「脳中心説」を提唱していました。この二つの学説は長きにわたり対立しましたが、2世紀の医学者ガレノスが神経系の研究を通じて脳の役割を実証的に示したことで、次第に脳中心説が優勢になっていきました。

エジプト文明との比較

興味深いことに、古代エジプトではミイラ製作の際に脳を取り除く一方、心臓は死後の世界の審判に必要とされ体内に残されました。胃や腸などの消化器官はカノポス壺と呼ばれる容器に別途保存されましたが、これらが生命の中心とみなされていたわけではありません。

まとめ

古代ギリシャ人にとって生命の中心は胃ではなく、多くの場合は心臓、あるいは一部の思想家にとっては脳でした。「感情は胸の内から湧き上がる」という心臓中心的な捉え方は、現代の私たちが「心で感じる」と表現することにもその名残を見ることができます。