古代の歴史

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

「初めて白兵戦に臨んだバレリオは、その時点で最善の選択は盾の後ろに身を潜め、頭を出さないことだと判断した。頭を出して攻撃しようとした瞬間、顔に突きを受けかねなかったからである。そこで彼は敵の武器による攻撃や打撃に耐え続け、敵が次第に疲弊し、十分に隙を見せる瞬間が訪れるのをひたすら待った。」

「アントニオの軍団兵たちは互いを見つめ合った。疲れ果て、血まみれだった。もはや人間というより野獣のようで、鎧は真っ赤に染まり、元の色を判別することすらできなかった。一人が仲間たちに視線を巡らせると、彼らは残されたわずかな武器を下ろし、息をつく余裕のある楽な姿勢へと移った。」

「戦闘が一瞬途切れた隙を捉え、第二波の敵が渡り通路を越えている間に、最前列の軍団兵たちは互いに間隔を開け、次の列の仲間が前に進んで持ち場に就けるだけの空間を作った。最前線の兵士に疲労の兆候が現れると、すぐ後ろの列に道を譲り、自分は後ろへ下がる。これが全ての列で繰り返され、隊列の最後尾に至るまで続いたのだ。」

いま読んでいただいたのは、バルセロナ出身の作家セルヒオ・アレホ・ゴメス氏による三部作『ブラッド・ミシブ(Blood Missive)』第一部からの抜粋です。物語は、ローマ共和政末期にローマに仕えた軍団兵ティトゥス・ウァレリウス・ネルウァの活躍を描く歴史小説です。

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

セルヒオ・アレホ

筆者は6月15日、セルヒオ氏とお会いする光栄に浴しました。その日、本ブログ「Walking through history」は、歴史とその普及を愛する人々――職業の垣根なく集まったプロもアマチュアも交えたグループ――による第一回全国ワークショップに招かれたのです。この集会では、歴史普及者の協会を立ち上げるという素晴らしい構想が話し合われたほか、参加者全員が互いの活動について幅広い関心を抱き、熱心に意見を交わしました。

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

第一回歴史普及者集会での一幕。セルヒオ・アレホ氏によるローマ軍団に関する講演には、Antiqva Clio所属の軍団兵二人が同行しました。

個人的に最も心を打たれたのは、セルヒオ氏のこんな一言でした。「ローマの軍団兵が戦闘のただ中で何を感じていたのかを語るには、その者の皮膚にならなければならない」。この信念のもと、三部作の執筆に着手する前に、彼は実際に軍団兵になりきる道を選びました。バルセロナの歴史再現グループ「Barcino Oriens」のメンバーとなったのです。

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

画像をクリックすると、セルヒオ・アレホ氏の著作コレクション全容をご覧いただけます

歴史再現グループの存在自体は知っていても、その背後にある膨大な労力については考えたことがありませんでした。よく知らないまま眺めていると、どこか即興的で、言い換えれば「オタク仲間の集まり」のような印象を受けることもあるかもしれません。この言葉なら、この活動に打ち込む皆さんも一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。幸い、当日参加されていたもう一人の方が、私の疑問を見事に解消してくれました。古代史を専門とし、ローマ世界の研究者として博士号取得が目前のマルコ・アルマンサ・フェルナンデス氏です。当日のお話は大変示唆に富んでいたため、私はぜひ本誌読者のために数行寄稿していただきたいと直接お願いしました。「歴史再現はどのように歴史普及に役立つのか」という問いに対する、彼の答えが以下です。

歴史再現による歴史普及

歴史を伝える手段は、文章、動画、写真など実に多様です。しかしそれらとは別に、歴史そのものを感じ、触れるという方法があります。では、どうすれば歴史を感じられるのでしょうか。答えは歴史再現です。

ただし、歴史再現は実験考古学と切り離して考えてはなりません。実験考古学とは考古学の補助科学であり、試行錯誤を通じて、道具や器物、衣服などが当時どのように作られ、使われていたのかを実証的に検証する学問です。こうした研究によって、過去の姿をおおよそながら復元できるのです。

歴史再現とは、実験考古学をさらに一段進めたものです。再現対象の時代における民間生活や軍事生活を自ら追体験するとともに、解説や講演を通じて過去の暮らしを人々に知ってもらう活動です。さらに重要なのは、来場者自身に歴史へ触れてもらうこと。当時の食を味わってもらい、器物を手に持ってもらい、その重さ、手触り、匂いを感じてもらうのです。こうすることで観客は、五感を使った全く異なるやり方で歴史を学び、体得します。

少なくとも軍事史に関していえば、歴史再現と実験考古学を組み合わせることが、歴史を理解する最良の道です。私たちの場合、テーマはローマです。軍事的なテーマでは、写真でご覧いただくとおり、完全な装備一式を身につけられることが何より重要です。装備全体の実重量約40kgが体に加わる重みを肌で感じ、その状態で兵士たちがどう動き、どう訓練し、どう戦えたのかを体感できるのです。記事や歴史小説を執筆する場合も、装備の重さ、負担、消耗、そして当時の日常生活を実感してから書くことが常に推奨されます。そうすることで、物語を紡ぐ際に通常見落とされがちな独特の要素を捉えられます。素材の製造方法そのものではなく、その素材を手に入れるまでの労力、使用しているときの感覚、習得に要した時間というコストこそが、本質的に重要なのです。

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多くの人は、映画や本で「ローマの剣は人体を貫通した」と読んだり聞いたりしています。そのほうが映画的で壮快だからでしょう。しかし実験考古学が示すのは正反対の事実で、平均的な刺入の深さはわずか3〜5cm程度にとどまります。実験考古学と歴史再現は、映画や時折目にする記述が生む俗説を打ち砕きます。同時に、古代の史料が正しいか否かにかかわらず、その理解を深める助けにもなります。古典史料の著者にとって「取るに足らないこと」として記録されず、結果として後世に伝わらなかった秘密――それは試行錯誤の実践を通じてこそ発見されるのです。

歴史再現は、ローマ人が戦闘の中でどう在りえたのかを理解することにも役立ちます。アドレナリンの高まり、混沌、恐怖、痛み――こうした感覚は、実戦を経験しない限り、あるいはそれを再現してみない限り、決して知り得ません。そして後者こそが、現代の一般市民にできることなのです。感じ、理解し、もしその人が書き手であれば、文学作品として昇華させることができます。

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

その方法のひとつが、グループによる再現活動です。たとえば文化・実験考古学団体「Antiqva Clio」は、西暦2世紀初頭、トラヤヌス帝時代の民間・軍事・宗教の装備を再現しています。マドリードに拠点を置くこの団体は、実験考古学と歴史再現を通じて、ローマ人の日常生活、服装、振る舞いなどを追求するとともに、様々な種類の鎧、兜、剣といった軍事装備や、隊形訓練、機動の実技にも取り組んでいます。その結果、当時のローマ兵がどう戦い、どう訓練し、何を感じていたのかを、一人称の体験として体感できるのです。

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マルコ・アルマンサ

マルコ・アルマンサ氏はAntiqva Clioの代表を務めています。団体は約40名のメンバーで構成され、歴史学者や学生をはじめ、歴史学とは縁遠い職業の人々まで、多彩な顔ぶれが揃っています。つまり、誰もがこの輪に加われるということです。必要なのは、強い歴史への情熱だけ。マルコ氏自身の言葉を借りれば――

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Antiqva Clioは、博物館、考古遺跡、大学、学校、さらには幅広い種類の文化施設で歴史再現イベントを実施しています。国立考古学博物館(MAN)や、メリダ、セゴブリガといった著名なローマ遺跡など、重要な舞台で活動する機会にも恵まれてきました。そこで披露されるのは、軍団兵としての感覚から、ローマに生きた女性の暮らしまで、実に幅広い内容です。

ローマ軍団兵になりきる――歴史再現が体感させる古代ローマの戦場のリアル

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Antiqva Clioの活動を捉えたスナップ写真の数々

最後に、Antiqva Clioの公式サイトで、その活動をぜひ詳しくご覧ください。

https://www.antiquaclio.com/

また、各種SNSでも最新のイベント情報を随時発信しています。

https://www.facebook.com/antiquaclio/

https://www.instagram.com/antiqva_clio/?hl=es

画像提供:セルヒオ・アレホ氏およびAntiqva Clio