エジプトでは今でもパピルス紙を作っている?
結論からお伝えすると、エジプトでは今でもパピルス紙(パピルス・ペーパー)が作られています。ただし、その用途は大きく変化しており、かつてのような日常的な筆記材料ではなく、主に装飾品や観光土産として生産されているのが現状です。
古代エジプトを支えた「世界最古の紙」
パピルスは、ナイル川沿いに自生するカヤツリグサ科の水草「パピルス草」の茎の髄から作られる筆記材料です。紀元前3000年頃にはすでにエジプトで製造が始まっており、ヒエログリフ(神聖文字)を記した公文書や『死者の書』など、数多くの重要な記録がパピルス紙に残されています。
軽量で持ち運びやすく、巻物(スクロール)に加工できるパピルスは、当時の地中海世界で最高の筆記材料とされ、エジプトの重要な輸出品としても栄えました。
なぜパピルス紙は衰退したのか
パピルス紙の地位を脅かしたのは、次の2つの新しい材料でした。
1. 羊皮紙(パーチメント)の登場
動物の皮を加工して作る羊皮紙は、パピルスよりも耐久性に優れ、両面に書けるという大きな利点がありました。湿気に弱いパピルスと比べて環境への適応力も高く、中世ヨーロッパでは標準的な筆記材料として広く使われました。
2. 植物繊維由来の紙の伝来
8世紀頃、中国で発明された製紙技術がアラビア経由でエジプトにもたらされると、安価で大量生産可能な紙が急速に普及しました。こうしてパピルス紙は、実用的な筆記材料としての役割を徐々に終えていったのです。
現代のパピルス:観光産業としての復活
20世紀半ばには一時、パピルスの製造技術そのものが失われたとも言われていましたが、1970年代にエジプトの研究者ハガー・ラガブ博士らによって伝統的な製法が復活しました。
現在のエジプトでは、カイロ周辺の専門工房や工場でパピルス紙が作られており、ヒエログリフや古代エジプトの絵画を描いたお土産用のパピルス画が特に人気です。また、美術作品の素材やインテリア装飾など、芸術的・文化的な用途でも親しまれています。
一方で、日常的な筆記用具としてパピルスが使われることはほとんどありません。あくまで文化遺産や観光資源としての位置づけだと言えるでしょう。
まとめ
エジプトでは今でもパピルス紙は作られていますが、それは古代のような筆記材料としてではなく、観光客向けの土産品や装飾品としてです。約5,000年の時を超えて受け継がれるこの伝統技術は、エジプトの豊かな歴史と文化を今に伝える貴重な存在となっています。