古代の歴史

体長5cmのエビが戦局を変えた?テナガエビの“銃声”が米潜水艦の対日攻撃を支えた理由

動物たちが人間同士の戦争に巻き込まれてきた歴史については、これまでも何度か触れてきた。多くの場合、馬や象、犬のようにその身自体が武器として用いられた。あるいは、ギリシャとブルガリアの国境紛争の発端となった一匹の犬や、フランスとブラジルを開戦寸前まで追い込んだイナゴのように、争いの引き金となった例もある。今回は、甲殻類が再び主役となる話だ。第二次世界大戦で、思いがけない形で歴史の表舞台に立った「テナガエビ(スナッピングシュリンプ)」の物語である。

体長5センチの小さな狩人

ここでいうのは普通のエビではない。カラエビ下目に属するテナガエビ科(Alpheidae)の仲間で、英語では「ピストル・シュリンプ」とも呼ばれる。体長はわずか3〜5センチほどしかない。この小ささこそが幸いし、暖かい海でも冷たい海でも、海岸の岩の隙間やサンゴ礁の穴に身を隠して暮らすことができるのだ。

名前の由来は、狩りに使う「鋏脚(きょうきゃく)」という武器にある。左右どちらか片方だけが異常に発達し、体のほぼ半分にも達する巨大なハサミへと成長した腕である。

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しかし、このハサミは他の甲殻類のものとは大きく異なる。第一に、失っても再生できる。第二に、開閉の仕組みがまるで違う。関節が片側を直角まで持ち上げ、一気に解放すると、もう片方に自動的に嵌まり込むという構造なのだ。これはまさに拳銃の撃鉄(ハンマー)の動きに似ている。だからこそ英語では「ピストル・シュリンプ」と呼ばれるのである。そして、この奇妙な仕組み以上に驚くべきなのが、それが作動した瞬間に生じる効果だ。

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千分の一秒の超高速パンチ

暗い隠れ家の中で、共生相手のハゼの尾びれの動きを手がかりに獲物を察知すると、テナガエビは素早くハサミを突き出し、撃鉄を起こして閉じる。この瞬間、千分の一秒のうちに強力な気泡の波が発生し、獲物――たいていは無脊椎動物だが、ときには自分より大きな魚――を殺すか気絶させる。

実際、この衝撃波は小さなガラス瓶を割るほどの威力があることが確認されており、「銃」の比喩がいかに的を射ているかがわかる。

さらに驚くべき効果もある。「ソノルミネセンス(音発光現象)」と呼ばれるもので、液体中で超音波によって目に見えない光が発生する現象だ。これは気泡の急速な崩壊によって説明される。圧力低下で生じた空洞(気泡)が、圧力の回復とともに内側へ潰れる際、約7,700度もの高温に達するのである。ちなみに、より大型のシャコ(口脚類)もよく似た狩猟方法を用いている。

海で最も騒がしい生物のひとつ

生物学の話はここまでにして、本題に入ろう。テナガエビがコロニー(集団)を形成すると、海洋世界で最も騒々しい種のひとつになる。その騒音レベルは、記録保持者であるクジラ類に匹敵するのだ。

どういうことか。まさにあの独特な狩猟手段こそが原因である。ハサミが閉じる瞬間の圧力は最大80キロパスカルに達し、気泡は時速100キロで放出される。これが全体として約218デシベルの音に相当する。参考までに、マッコウクジラは約230デシベル、ベルーガ(シロイルカ)は約140デシベルだ。

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「エビ少年」が解き明かした謎

この驚くべき進化の適応自体は18世紀末から知られていた。ただし当時は、ハサミが閉じる音そのものだと考えられ、交尾の呼び声として使われるだけだと思われていた。真実が明らかになったのは1999年、オランダ・トゥウェンテ大学の若きドイツ人物理学者デトレフ・ローゼ(Detlef Lohse)の登場を待たねばならなかった。流体力学を専門とする彼は、ミュンヘン水族館のテナガエビの音響記録を目にし、自分がキャビテーション研究で扱っているパターンと酷似していることに気づいたのだ。生物学者から「気泡も発生している」と聞かされ、すべてが腑に落ちた彼は、実証実験に乗り出した。

ローゼはまず理論モデルをいくつか構築し、次に動物学界を最終的に納得させるため、水槽内のテナガエビの巣穴のそばにマイクロフォンと高速度カメラを設置した。そして、筆で住人をくすぐって挑発した(実際には7本の筆を使用)。エビは攻撃的に反応した。

撮影された映像は、ハサミの突起が対応する孔と噛み合うことで高速の水流ジェットが生じる様子を捉えていた。高速流は低圧力を意味し、そこに気泡が発生する。気泡はハサミから離れると数千個の小さな気泡へと崩壊し、獲物を気絶させるか、場合によってはバラバラにしてしまうのだ。

最も興奮すべき発見は、この過程に太陽表面に匹敵する熱(ごく短時間ではあるが)、音(ハサミの2つの部分が衝突する音ではなく、気泡の崩壊によるもの)、そして光(発生した5万個の光子は、高感度光検出器によってのみ記録可能だった)が含まれていたことだった。

ローゼによれば、彼とチーム(バーバラ・シュミッツ、ミヒェル・フェルスルイス、アンナ・フォン・デア・ハイト)は、成功を祝ってバーでビールを飲んでいたとき、この現象を「シュリンプルミネセンス(shrimpoluminescence)」と命名したという。ちなみに彼は今でも冗談めかして「エビ少年(the shrimp boy)」と呼ばれているそうだ。

体長5cmのエビが戦局を変えた?テナガエビの“銃声”が米潜水艦の対日攻撃を支えた理由

620種のコロニーが放つ“銃声”の嵐

ここで想像してみてほしい。数百個体からなるテナガエビのコロニー(種類は620以上ある)が、次々と「銃」を発射している様子を。しかも、ハサミの音は仲間同士のコミュニケーションにも使われるため、組織的な大合唱は、水中音響通信やソナーを妨害しうるレベルに達する。世界が戦争状態にあり、海面の上下が広大な戦場となっているとき、これは重大な問題となりうる。

1944年、米海軍の奇策

実際にそれが起きたのが1944年のことだ。誰かがこの現象の利用価値に気づき、米海軍に報告したのである。どうやら海軍技術者たちは、テナガエビのコロニーが発する騒音を、日本の港湾に設置されたハイドロフォン(水中聴音機)に対する「音響スクリーン」として使うことを思いついたようだ。

ハイドロフォンとは、水中で発生した音を電気信号に変換して識別可能にする変換装置である。第一次世界大戦中に潜水艦へ搭載され始め、1920年代のソナー開発の出発点となった。

ちなみに英国海軍は、艦船のスクリューや舵が推進器の発生させるキャビテーション気泡によって損傷していることを検知し、1916年に物理学者レイリー卿へその最小化方法の研究を依頼していた。レイリーは失敗に終わり、現象の記述を残すにとどまった。しかし、その記述は非常に詳細なものであり、83年後のローゼの実験の基礎の一つとなったのである。

エンジン音を消したエビたち

やがて第二次世界大戦が勃発し、ソナーは潜水艦戦の新時代を切り開いたように見えた。港への奇襲攻撃は困難になったはずだった。しかし前述のとおり、米潜水艦は日本沿岸や太平洋各地の沿岸に豊富に存在するテナガエビのコロニーを利用し、その周辺を移動することでエンジンの騒音を覆い隠したのである。さらに後には、ビキニ環礁での原水爆実験の際にも、兵器の致命的な効果を検証するために活用された(音響記録の減少は、生命体の不在を示した)。

戦後になって、魚の浮き袋やクラゲもまた、この混乱に一役買っていたことが判明した。ガスで満たされたそれらの体内が、いわゆるDSL(Deep Scattering Layer=深層散乱層)と呼ばれる、音が通過しにくい深海層で反響音を作り出し、しばしば海底と誤認されたのである。

こうした現象は今日でも関心を集めており、DARPA(国防高等研究計画局=ペンタゴンの研究開発機関)は、潜水艦探知への応用に向けて研究を続けている。