古代の歴史

オーディンとは?北欧神話の最高神――役割・象徴・伝説を徹底解説

オーディンとは?北欧神話の最高神――役割・象徴・伝説を徹底解説

オーディン(古ノルド語:Óðinn)は、北欧神話における最高神にして戦士たちの守護神です。ドイツ語圏ではヴォータン(Wotan)、古英語ではウォーデン(Woden)とも呼ばれます。その名は「狂気」「恍惚」を意味する古ノルド語の「óðr」に由来し、中世の年代記作者アダム・フォン・ブレーメンは「Wotan, id est furor(ヴォータンすなわち狂気)」と記しています。ドイツ語の「Wut(憤怒)」も同じ語源につながると考えられています。

この「óðr」が指すのは、戦いの熱狂、性的興奮、詩的インスピレーション、魔法によるトランスなど、人の内側からその存在を捉える激しい高揚状態のことです。

オーディンとは?北欧神話の最高神――役割・象徴・伝説を徹底解説

オーディンの役割

オーディンは、戦場で命を落とした勇士の魂の半分を迎え入れます。残りの半分を受け取るのは女神フレイヤです。これらの戦士(エインヘリャル)は昼間こそ互いに戦って武芸を磨きますが、夜にはオーディンの宮殿での宴へ招かれます。

同時にオーディンは、知恵と詩的霊感の神でもあり、自らも卓越した戦士です。怒りの神、狡知の神、勝利の神としての顔も持ち合わせます。

賢明で勇敢、そして気前の良い神である一方、陰鬱で狡猾、厳格ゆえに恐れられる存在でもあります。正妻は女神フリッグです。

オーディンには数多くの別名(顕現形)があるとされ、まだ特定されていないものもあるかもしれません。「千の名を持つ神」と称され、代表的な呼び名には次のようなものがあります。

  • アルファズル(Alfaðir:万物の父)
  • ボルヴェルク(Bölverk:災いをもたらす者)
  • ハール(Hárr:高き者)
  • ハールバルズ(Hárbarðr:灰色髭)
  • ヤフンハール(Jafnhárr:同じく高き者)
  • スリーズ(Þriði:第三の者)
  • ヴェグタム(Vegtam:道に詳しき者)

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象徴とアトリビュート

オーディンは、あごひげをたくわえた隻眼の老人として描かれます。8本足の神馬スレイプニルに騎乗し、手には槍グングニルを携えます。

宮殿ヴァルホッラ(ヴァルハラ)では、二羽のワタリガラス――「思考」を意味するフーギンと「記憶」を意味するムーニン――が、九つの世界で見聞きした出来事を彼の耳元にささやきます。足元には、大食のゲリと強欲のフレキという二頭の狼が控えています。

玉座フリーズスキャールヴ(Hliðskjálf)に座れば、九つの世界で起こるすべてを見渡すことができました。

また、9日ごとに9倍に増殖する魔法の指輪ドラウプニルを所有していましたが、最愛の息子バルドルの葬火の上に置いて捧げたと伝えられます。

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祭りと儀礼

オーディンは、冬至の祭りユール(12月21日)を、弓とスキーの神ウルと共に祝う存在とされています。

オーディンをめぐる神話と伝説

天地創造に際して、オーディンは兄弟ヴィリとヴェーと共に原初の巨人ユミルを討ち倒しました。その亡骸からは人間の住む世界ミッドガルズが造られ、怪物の死骸を蝕んだ虫からはドヴェルグ(小人)たちが生まれました。さらに二人は、ニレとトネリコの木片に命を吹き込み、最初の人類アスクとエムブラを生み出したのです。

その後、オーディンはルーン文字の秘密を得るため、自らの体に槍グングニルを突き立てたまま、世界樹ユグドラシルに9夜にわたって吊るされました。飲まず食わずの苛烈な苦行の果てに、ついにルーンの知識を手に入れたといいます。

また、知恵を求めてミーミルの泉に片目を差し出し、ドヴェルグたちが守る詩の蜜酒を盗み出しては、神々と人間に詩の才能を授けました。

冬至の祭りの頃には、スカンジナビアの子どもたちに贈り物を届ける(あるいは罰を与える)存在でもあったとされます。

予言の詩『巫女の予言』(ヴォルスパ)によれば、世界の終末ラグナロクの日、オーディンはロキの息子である魔狼フェンリルに呑み込まれる運命にあるそうです。

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系譜と家族

オーディンは巨人ボルとベストラの息子です。その子には、雷神ソール、光の神バルドル、神々の使者ヘルモーズ、ヴァーリ、ヴィーザル、詩の女神サーガらがいます。

妻はフリッグ(耕された大地の意)。ほかにも、ヨルズ(荒れた大地)、グリーズ、リンド(冬の凍てつく大地)との間に子をもうけたと伝えられます。

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オーディンの名を残す地名

フランス北部(パ=ド=カレー県マルキーズ郡周辺):

  • オーダンガン(Audinghen/Odinghen)
  • オーダンベール(Audembert/Odinberg)
  • 同じ教区に属するラヴァントゥン(Raventhun)、タルダンガン(Tardinghen/Thordinghen)、ロッキャンガン(Locquinghen/Lokinghen)
  • 近郊のオードレセル(Audresselles/Oderzell)

フランス中部:

  • ベリー地方のヴァタン(Vatan/Wotan)

現代に残るオーディンの痕跡

ラテン系諸語の曜日名がローマ神話の神々(例:「火曜日=火星の日」「水曜日=水星の日」)に由来するのに対し、英語などのゲルマン系言語では北欧(ゲルマン)神話の神々の名が使われています。

英語の Wednesday(水曜日)は、オーディンと同一視されるゲルマンの神ウォーデンに由来する「Wōdnesdæg(ウォーデンの日)」が語源です。本来、曜日は次のように神々と直結していました。

  • 古ノルド語:Sunnudagr(太陽の日)、Mánadagr(月の日)、Týsdagr(テュールの日)、Óðinsdagr(オーディンの日)、Þórsdagr(ソールの日)、Frjádagr(フレイ/フレイヤの日)、Laugardagr(沐浴の日)
  • デンマーク語・ノルウェー語:Søndag、Mandag、Tirsdag/Tysdag、Onsdag、Torsdag、Fredag、Lørdag/Laurdag
  • 英語:Sunday、Monday、Tuesday、Wednesday、Thursday、Friday、Saturday

なお、ローマ人はオーディンをメルクリウス(水星)になぞらえていました。そのため、フランス語の mercredi(水曜日)やスペイン語の miércoles(水曜日)もまた、間接的にはオーディンに捧げられた日だと考えることができるのです。