古代の歴史

三菱G4M「ベティ」――一式陸上攻撃機の栄光と悲劇

三菱G4M「ベティ」――一式陸上攻撃機の栄光と悲劇

第二次世界大戦中、大日本帝国海軍航空隊が東方戦線で運用した陸上攻撃機の中で、最も有名かつ優れた機体こそ、三菱G4M、すなわち連合軍のコードネームで呼ぶところの「ベティ(Betty)」である。搭載量は控えめで、乗員や燃料タンクへの防護も決定的に不十分だったが、その飛行性能、とりわけ圧倒的な航続距離は群を抜いていた。

開発の背景

G4Mの設計は1937年、海軍が三菱G3M(九六式陸上攻撃機)の後継となる陸上攻撃機の競争入札を行ったことに始まる。当時G3Mは中国方面の作戦に投入されたばかりだった。新型機には1,000馬力級エンジン2基による推進、航続距離4,800km、速度約400km/hが求められた。本庄季郎率いる三菱の設計チームは、これほど小さい出力では要求性能を達成できないと早々に見切りをつけ、1,500馬力の三菱「火星」空冷星型エンジン2基を備えた、極めて洗練された単葉機の研究に集中した。

G3M最大の弱点であった防御武装の貧弱さは、G4Mでは7.7mm機銃5挺と20mm機関砲1門の装備によって解決された。しかし、長大な航続距離に必要な大量の燃料を積みながら、重量軽減のため燃料タンクにも乗員区画にも防弾装備を一切施さないという決断が下された。この選択が、後の悲劇を生むことになる。

試作から護衛戦闘機G6M1へ

三菱G4M「ベティ」――一式陸上攻撃機の栄光と悲劇

1939年10月に初飛行した試作機は、要求仕様を満足するどころかそれを上回る性能を示し、ほぼ即時に量産化が決定した。ただし当初は計画されていた爆撃機型ではなく、三菱G6M1護衛戦闘機として生産されることになった。これは中国戦線でG3Mが受けた損害があまりに大きかったためであり、G4Mはそれを受けて戦闘機へと改装されたのである。機首と尾部の銃座はそのまま残され、背部武装は撤去、側面の銃は20mm砲に換装され、さらに爆弾倉の代わりに同じ20mm砲2門を備えた腹部ゴンドラが取り付けられた。

実戦投入と輝かしい戦果

G4M1(一式陸上攻撃機一一型)の生産は1940年にようやく開始され、部隊への配備は1941年4月から行われた。G4M1は中国奥地への深部爆撃を実施し、敵戦闘機が不在だったこともあって高い効果を上げた。大戦開戦時の初期作戦でも成果は続いた。なかでもイギリス戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」の撃沈、そしてフィリピン攻略作戦において重要な役割を担った。

しかしニューギニア方面での戦闘では、より高性能な敵戦闘機の展開により甚大な損失を被ることとなった。この事態を打開するため、三菱は一二型(メーカー呼称G4M1a)を製造した。より強力なエンジン、簡易的なタンク防護、消火装置が与えられ、その代償として航続距離は320km減少した。

G4M2への発展と特攻母機

その後の改修により呼称も変更され、G4M2(二二型)となった。水メタノール噴射装置付き火星二一型(1,800馬力)への換装、洗練された機体形状、強化された武装、増加した燃料搭載量、そして爆弾倉扉の採用が特徴である。この新型は1943年7月に生産に入った。二二甲型・二二乙型は武装面の改良型に相当する。

すでに旧式化しつつあったものの、後継機の開発が遅れていたため改良は続き、G4M2a(二四型)が登場した。燃費に優れた新型エンジンが搭載され、武装構成の違いによる複数の派生型が生まれた。後期型では機首に海上捜索用レーダーが装備されている。

二四型の中でも小型ながら非常に有名な派生型が、有人特攻兵器「桜花」(横須賀MXY7)を懸下して運ぶ母機、G4M2e(二四型丁)である。二四型丁の大多数は、二四乙型・丙型爆撃機からの改造機だった。

1944年10月までにG4M2はすべてのG4M1を置き換え、G4M1は次要任務へと回された。しかし両タイプとも戦闘損失は極めて大きく、新たな改良型の開発が進められた。これが、フラップ、乗員用防弾装甲、再設計された尾部銃塔、上反角付き水平尾翼を採用した改良型(G4M3)である。生産は1944年10月から小規模に開始され、G4Mシリーズはこうしてその軍歴に幕を下ろした。

最後の任務と総生産数

この機体は敵防空体制が限定的だった局面では成功を収めたが、連合軍戦闘機が本格的に脅威となると損害は甚大になった。G4Mの最後の戦争任務は、降伏交渉に向かう日本の全権使節団の輸送であった。G4MとG6Mを合わせた総生産数は2,146機に達した。

主要諸元

  • 種類:爆撃・輸送および特攻兵器懸下用機
  • 乗員:7名
  • エンジン:三菱MK4T 火星二五型 空冷星型14気筒×2基(離昇出力1,825馬力、高度2,100mで1,680馬力)
  • 防御武装:7.7mm九二式旋回機銃×2(機首、各582発)、20mm九九式二号旋回機関砲×1(背部銃塔、270発)、同×2(側面、各270発)、同×1(尾部銃塔、270発)
  • 攻撃兵装:爆弾 最大1,000kg、または魚雷1本(800kg)
  • 最大速度:高度4,600mで440km/h
  • 巡航速度:高度4,000mで315km/h
  • 上昇時間:高度8,000mまで30分24秒
  • 実用上限高度:8,950m
  • 航続距離:6,000km
  • 重量:自重8,160kg/全備重量12,500kg
  • 翼幅:25m
  • 全長:20m
  • 全高:6m
  • 主翼面積:78.13㎡

※記載の性能および重量値はG4M2二二型にも準じる。