
ギャモン爆弾(Gammon bomb)は、イギリス陸軍の精鋭部隊SAS(特殊空挺部隊)が使用した手製の手榴弾の一種である。量産品ではなく、当初は工場ではなく連隊内で隊員たち自身の手によって調達・製作されていた点が大きな特徴だ。
トメ中尉が描くギャモン爆弾
エドガール・トメ中尉(第3RCP、フランスSAS所属)は、著書『Special Air Service』の中で、この爆弾について次のように生き生きと描写している。
「最も大事なものを忘れるところだった。ギャモン爆弾のことだ。それは一見すると頼りない代物で、伸縮性のあるジャージ生地でできた小さな黒い袋。婦人たちがパーティーに出かける際に携える化粧ポーチと見間違えるほどだ。しかし、その中にコンパクトやパフ、化粧道具が入っているはずがない。
中には2〜3ポンド(約1〜1.4kg)の高性能プラスチック爆薬がぎっしりと詰め込まれている。戦車の履帯どころか、ほぼあらゆる装甲がその威力に耐えることはできない。さらに、プラスチック爆薬にサーミット(発熱剤)を混ぜ込めば、敵戦車は容赦なく炎に包まれて燃え尽きるのだ」
対戦車兵器から「地獄の兵器」へ
当初、ギャモン爆弾の目的は装甲車両の破壊のみに限定されていた。しかし、戦争が進むにつれ状況は変わっていく。ナチスの残虐性を知り、虐殺された同志たちの無惨な遺体を目の当たりにするうちに、隊員たちもまた冷酷になっていった。捕虜を取ることよりも、良心の呵責なく敵を倒すことへと考え方が変化していったのである。
こうしてギャモン爆弾は、文字通り「地獄の機械」へと変貌を遂げた。自転車のチェーン、コルト弾、ボルトなどの破片材を詰め込まれた爆弾は、戦車にも歩兵にも区別なく使用されるようになった。半径20メートル以内のあらゆるものを切り裂き、引き裂く。まるで地獄行きの小包のように、一度に数十人単位の犠牲者を出すこともあったという。
ドイツ軍を欺いた爆発音
興味深いことに、ギャモン爆弾の爆発音は迫撃砲弾のそれに酷似していた。ドイツ軍はしばしばこれを誤認し、「重武装した大部隊からの攻撃を受けた」と思い込んだという。しかし実際には、それはごくわずかな人数のSAS隊員による襲撃だったのである。少人数部隊ならではの奇襲戦術と相まって、ギャモン爆弾は心理的な威嚇効果としても大きな役割を果たしたのだ。