
フランス北東部の都市ナンシーに佇むアール・ヌーヴォーの至宝、ヴィラ・マジョレル。1901年から1902年にかけて建てられたこの名建築が、大規模な改修工事を終え、このたび一般公開を再開しました。
ヴィラ・マジョレルは、家具職人であり装飾家でもあったルイ・マジョレル(1859〜1926)の私邸です。彼は「自分の作品の精神を体現する住まい」——モダンで、力動的で、簡素な家——を求め、エクトール・ギマールの影響を受けた若き建築家アンリ・ソヴァージュに設計を依頼しました。
外観の見どころは、石の質朴さと、煉瓦・木製建具・鉄細工の多彩な色彩との対比です。半円形の窓、外壁を覆う花の意匠、ステンドグラス、随所に施された鉄細工、アーチ型の出窓などを備えた3階建てのこの館は、立方体の構造をあえて崩した非対称のデザインによって、明るく躍動感あふれる表情を見せています。
唯一無二の実験的作品
完成からまもなく、ヴィラ・マジョレルは唯一無二の実験的作品として確固たる評価を得ました。芸術と産業の交差点に立ち、フランスにおけるアール・ヌーヴォーの先駆けとなった「ナンシー派」を代表する建築です。
20世紀初頭に誕生したナンシー派は、建築や家具の分野へと活動の場を広げ、1889年のパリ万国博覧会において重要な役割を果たしました。自然を主要なインスピレーションの源とし、中世の花卉装飾の復興にも力を注ぎました。ルイ・マジョレルは同派の創設メンバーの一人であり、副会長も務めています。
1926年にマジョレルが亡くなると、邸宅は国家に売却され、2017年までさまざまな行政機関の庁舎として利用されてきました。アール・ヌーヴォー遺産の再評価の高まりを受け、1996年には歴史的記念物(歴史建造物)に指定されています。
2003年からはナンシー市の所有となり、2011年には「メゾン・デ・イリュストル(偉人の家)」のラベルを取得。現在は当時の内装や、応接室・寝室の調度品を公開しており、家族の暮らしの温もりを再現しながら、1900年代のナンシーへとタイムスリップできる没入体験を訪問者に提供しています。