ベイラ(Beira)とは
ベイラは、ポルトガル北中部にかつて存在した公領であり、歴史的な地方(州)です。北はドウロ川の岸辺から、南東はテージョ川の上流域まで、そして東はスペインとの国境から西は大西洋に至る、広大な範囲を占めていました。
ムーア人との攻防と国境の争奪
この地域は8世紀にムーア人(イスラム勢力)から奪還されましたが、その後もムーア人による攻撃は15世紀まで続きました。さらに、ポルトガルとカスティーリャ王国の間で繰り広げられた戦争の際には、両国が争奪する最前線の地ともなりました。こうした激動の歴史が、この地方独特の堅固で気骨ある気風を育んだといわれています。
行政区分の変遷――「ベイラス」の誕生
1835年の行政改革により、ベイラはアヴェイロ、コインブラ、ヴィゼウ、グアルダ、カステロ・ブランコの5つの県へと分割されました。その後、1936年には以下の3つの新しい州が設けられました。
- ベイラ・リットラル(Beira Litoral):海岸部を中心とし、県都はコインブラ
- ベイラ・アルタ(Beira Alta):内陸高原地帯で、県都はヴィゼウ
- ベイラ・バイシャ(Beira Baixa):中心地はカステロ・ブランコ
これら3つの州は総称して「ベイラス(Beiras)」と呼ばれます。その後も度重なる行政区画の再編がありましたが、それぞれの州が持つ独自の性格と伝統は今日まで色濃く受け継がれています。
地形と主な見どころ
ベイラの西部には、潟湖で有名なアヴェイロ、大学都市として名高いコインブラ、そしてモンデゴ川河口の港町フィゲイラ・ダ・フォスが位置しています。ここから内陸へと進むにつれ、大地は次第に高くなり、起伏の激しい丘陵や山脈が連なっていきます。その頂点に立つのが、ポルトガル本土の最高地点であるトーレ山(Torre / Alto da Torre)です。
一方、東部のスペイン国境付近には、アルメイダやサブガルといった、保存状態の良い歴史的要塞が今も点在しています。星形要塞として知られるアルメイダなどは、国境紛争の時代を今に伝える貴重な遺産です。
文学が描いたベイラの暮らし
岩がちで荒々しい自然に恵まれたベイラには、歴史的・文化的・自然的な魅力を持つ見どころが数多くあります。また、この土地は文学とも深い縁があります。医師でもあったフェルナンド・ノモラ(Fernando Namora)とミゲル・トルガ(Miguel Torga)、そして作家のアキリーノ・リベイロ(Aquilino Ribeiro)は、ベイラの素朴で力強い田園生活を作品の中に生き生きと描き、この地方の精神を後世に伝えました。