ノルマンディーの狭路で待ち伏せするドイツ戦車猟兵
1944年6月10日、ノルマンディー。第130教導装甲師団(パンツァー・レーア)所属、第901装甲擲弾兵連隊第1中隊第2小隊のルディ・ブラッシェ軍曹は、自ら指揮する戦車猟兵チームを率いて、ほぼ直角に折れ曲がる細い道の端へと接近した。彼らの武装は、ドイツ版バズーカとも呼ばれる「パンツァーシュレック」、吸着式地雷、そして手榴弾である。ブラッシェたちは道端の樹木の陰に身を潜めた。
小隊の前進を命じようとしたその瞬間、ランゲルマン一等兵が囁いた。「左に戦車だ、ルディ」。間もなく、多数の戦車エンジンの轟音が聞こえてきた。数秒後、先頭のシャーマン戦車が姿を現し、その後ろにも次々と続いた。
イギリス軍戦車はゆっくりと、慎重に進んでいた。彼ら自身は気づいていなかったが、イギリス戦車隊はまさにドイツ軍中隊の真横に差しかかっていたのだ。そして、イギリス軍とドイツ軍中隊との間に横たわっていたのは、ブラッシェの班だけだった。軍曹はただちに部下の一人を伝令として中隊へ送り出した。
パンツァーシュレックの一撃、砲塔を吹き飛ばす
ブラッシェはパンツァーシュレックを手に取り、草木に覆われた道端に射撃位置についた。先頭戦車が十分に近づくのを待ち、引き金を引いた。成形炸薬弾頭のロケット弾は至近距離からシャーマンの砲塔を捉え、砲塔を車体ごと吹き飛ばした。
「ついて来い!」即座に叫ぶ軍曹。ケック、ランゲルマン、ヒルの各一等兵が、ロケット弾を抱えて彼に続いた。
「急げ!この縦隊の最後尾の戦車まで撃破すれば、奴らを細道に閉じ込められるぞ」と軍曹は叫んだ。同時にイギリス軍も射撃を開始していた。敵機関銃の弾雨をかいくぐり、軍曹と部下たちは道路に平行して移動し、細道の入り口を目指した。
弾薬誘爆、戦車は文字通り粉々に
彼らは見事これを成し遂げた。ブラッシェは道端に移動し、草木の間から射撃位置を構えた。部下の一人がパンツァーシュレックに弾を装填し、軍曹が引き金を引く。今度のロケット弾は戦車の装甲を貫通し、弾薬庫に命中した。着弾から数秒後、戦車は恐るべき威力の大爆発によって文字通り粉々に吹き飛び、その爆風はドイツ兵たち自身をも殺しかけた。
しかし突然、イギリス歩兵も姿を現した。ドイツ軍迫撃砲が彼らに向けて射撃を開始する。その砲声は明瞭に聞こえた。敵の進撃路上に、ブラッシェと三人の部下だけが孤立していたのだ。
吸着地雷と束ねた手榴弾で戦車を葬る
「ヒル、ランゲルマン、俺に続け。ケックは援護しろ」と軍曹。彼らは草木の中を道路に沿って走り、やがてイギリス兵と突如遭遇した。ブラッシェは短機関銃を掃射して敵を物陰に押し込んだ。
その一方で、ヒルは吸着式成形炸薬地雷(ハフトホーラーデュング)を手にシャーマンに駆け寄り、車長用ハッチを開けようとした。幸運にもハッチは施錠されていなかった。彼は瞬時に地雷に信管をセットし、戦車内へ投げ込むと、全速力で飛び退いた。残された時間は、信管作動までわずか7.5秒だった。
鈍い爆発音とともに戦車は破壊された。ブラッシェは短機関銃を点射しながらさらに前進し、もう一台のシャーマンを発見した。軍曹は腰から手榴弾を四つ取り出して束ねると、戦車めがけて突進した。部下たちはイギリス歩兵への射撃で彼を懸命に援護する。
彼は戦車によじ登り、束ねた手榴弾をエンジン上部のグリルに置くと、全力で飛び降りた。手榴弾がガソリンエンジンを炸裂させた瞬間、彼は転がるように部下のもとへ戻った。ガソリンが辺り一面に撒き散らされ、戦車は炎上。怯えた乗員は戦車を放棄して逃げ出した。
こうしてブラッシェは無事、部下たちと合流した。ドイツ軍戦車猟兵にとって典型的な、そしてまた一つ成功に終わった戦闘であった。
背景:ティリー・シュル・スール攻防戦とパンツァー・レーア師団
この交戦は、ノルマンディー上陸直後の激戦地ティリー・シュル・スール周辺で展開された戦闘の一場面とされる。精鋭パンツァー・レーア師団は、イギリス第50北人師団や第7機甲師団などのイギリス軍部隊と対峙し、ボカージュ(生垣地帯)の地形を活かした待ち伏せ戦術で連合軍の装甲部隊に大きな損害を与え続けた。
パンツァーシュレック(RPzB 54)は有効射程約150メートルの対戦車ロケット发射器で、至近距離からの射撃ではシャーマン戦車の装甲を容易に貫通できた。また、吸着式成形炸薬地雷は磁石で装甲板に吸着させて設置する近接戦闘用の兵器であり、使用には極めて高い勇気を要した。ブラッシェ軍曹の行動は、そうした歩兵対戦車戦闘の過酷さと、ドイツ軍戦車猟兵の戦術的熟練を象徴するエピソードといえる。