古代の歴史

「ロシアの」ドイツ空軍――ヒトラーに仕えたソ連人パイロットの知られざる戦い

「ロシアの」ドイツ空軍――ヒトラーに仕えたソ連人パイロットの知られざる戦い

独ソ戦が始まると、数千人規模のソ連国民がドイツ軍に身を投じた。その多くは捕虜であり、飢えによる緩やかな死よりも、敵との協力を選んだ者たちだった。中には確固たる反共主義者もいれば、単なる日和見主義者も含まれていた。

彼らは通常、ドイツ軍師団の補助要員(ヒヴィ=HiWi)として配属されるか、民族ごと(ウクライナ人、コサックなど)あるいは思想ごと(反共主義者、民族主義者)に独自の部隊を編成して戦った。そんな中、最も知られておらず、しかも皮肉な存在だったのが、ドイツがソ連人捕虜によって編成した航空部隊である。

1942年には早くも飛び立っていた

実は1942年の時点で、すでにソ連人がルフトバッフェ(ドイツ空軍)の部隊で飛行していた。ベラルーシでは、ポリカールポフPo-2複葉機を装備した飛行隊が編成され、パルチザン掃討作戦に投入されている。

1943年10月、ヴァルター・ホルタース中将はソ連人の技師や技術者たちとともに「ホルタース分遣隊」を結成した。さらに同年12月、大佐(のちに中将)ヴィクトル・マリチェフの協力を得て、ラトビアのダウガフピルスに第1「東方飛行群」(ロシア人部隊)が設立されたのである。

この部隊の装備は多彩だった。ドイツ製のハインケルHe 50およびHe 46、アラドAr 66、ゴータGo 145に加え、ソ連製のポリカールポフI-15、I-153、Po-2、ヤコブレフUT-2などである。部隊は主に夜間作戦に従事し、1944年7月までに500回を超える出撃をこなし、その多くは対ソ連軍への攻撃に充てられた。損害は作戦中の喪失3機とパイロット9名(うち数名は事故によるもの)にとどまった。

ROA第1航空連隊――兵力7,500名

こうしたソ連人航空兵たちは、反共組織「ロシア解放軍」(ROA)に参加していた。ROAの航空部門である第1航空連隊は兵力7,500名を擁し、マリチェフが指揮を執った。連隊(のちに師団へ拡充)は7個飛行隊で構成されていた。すなわち、偵察1個、輸送1個、近接支援1個(のちに夜間爆撃に転換)、爆撃1個、訓1個、訓練1個、軍事協力1個、そして戦闘機1個(Me 109G装備)である。

さらに第9対空砲連隊、通信中継部門、落下傘大隊もこの部隊に統合された。隊員たちは、ROAの徽章を付した標準的なドイツ空軍の軍服を着用していた。

配属された機材は以下の通りだ。メッサーシュミットBf 109G-10が18機、Ju 87Dスツーカが14機、He 111爆撃機が7機、連絡・軍事協力用のFi 156が2機、U-2(Po-2)が5機、Bf 108が2機。このほか、Hs 129やDo 17の運用を示す記録も残されている。

1944年3月以降は、ソ連人が志願対空砲部隊の人員としても動員され、これらの将兵はのちに親衛隊(SS)へ移籍していった。補助業務に従事するソ連人も決して少なくなかった。

エースから裏切り者へ――ブイコフの転落

ルフトバッフェで戦ったソ連人パイロットの典型例が、セミョーン・トロフィモヴィチ・ブイコフである。1942年7月、事故の責任を問われたブイコフは、軍法会議により懲役5年の強制労働を宣告された。しかし数か月後には刑を免除されて現役に復帰し、1943年8月までに17機撃墜のエースとなり、誰もが憧れる「ソ連邦英雄」の称号まで手にしていた。

ところが1943年12月10日、ブイコフはドイツ軍の対空砲火で撃墜され、意識不明のまま機外へ救出された。一命は取り留めたものの、捕虜収容所へ送られる。そこで1944年初頭、マリチェフが彼を見つけ出し、ROA第1航空連隊への参加を説得したのである。ブイコフ自身は後年、「自分は圧力に屈しただけだ」と語っている。

その後、彼は夜間爆撃飛行隊の指揮官としてドイツ側で戦い続け、同時に友人のアンチレフスキーとともに、ほかのソ連人捕虜パイロットの勧誘工作にも関与した。1945年4月には、二人そろってオーデル川戦線で祖国の同胞と銃を交えていたと伝えられる。

待ち受けていたのは処刑台

やがてブイコフは米軍の捕虜となり、ソ連当局へ引き渡された。1946年8月24日、軍事裁判にかけられた彼は、反逆罪により死刑を宣告される。恩赦の申請は却下され、同年11月4日についに処刑された。

アンチレフスキーもマリチェフも、まったく同じ運命をたどった。ドイツ側で戦ったソ連人パイロットや技術者の大多数もまた、帰国後は粛清の嵐に呑まれ、同じような末路を迎えたのである。

「ロシアの」ドイツ空軍――ヒトラーに仕えたソ連人パイロットの知られざる戦い

マリチェフ(右)

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アンチレフスキー

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ブイコフ

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