『プリマス開拓史』におけるアメリカ先住民の描写
ウィリアム・ブラッドフォードが著した『プリマス開拓史(Of Plymouth Plantation)』は、メイフラワー号による渡航から始まるプリマス植民地の建設と発展を記録した歴史書です。総督として植民地を指導したブラッドフォード自身の視点で書かれており、清教徒(ピルグリム・ファーザーズ)とアメリカ先住民(インディアン)との関係は、その重要なテーマの一つとなっています。ただし、その描写は一面的なものではなく、恐怖や警戒から協力や感謝まで、実に複層的なものです。
上陸当初の恐怖と「痕跡」だけの出会い
清教徒たちが新天地に到着した直後、彼らが先住民と直接対面することはありませんでした。代わりに目にしたのは、疫病によって住人が絶えて放棄された村の跡、耕された畑、トウモロコシの貯蔵庫、そして墓標といった「痕跡」でした。ヨーロッパから持ち込まれた疫病が先住民社会に壊滅的な打撃を与えていたことを示す光景であり、ブラッドフォードはこれを、神が入植者の道を開いてくださった証しとして受け止めています。
その一方で、未知の土地に住む人々への強い恐れも描かれており、入植者たちは武器を手放さず、常に警戒を続けました。
最初の直接交流:サモセット、スクワント、マサソイト
本格的な直接交流は1621年3月に始まります。英語を話すことのできた先住民サモセットが「ようこそ、イギリス人よ」と声をかけ、まもなくパタクセット出身のスクワントが現れました。スクワントはトウモロコシの栽培法やこの土地ならではの漁法を入植者に教え、通訳としても大きな役割を果たしました。さらに、ワンパノアグ族の首長マサソイトとの間で平和協定が結ばれ、この同盟はその後数十年にわたって維持されることになります。
ブラッドフォードの視点:神意としての先住民
特筆すべきは、ブラッドフォードがスクワントを「神が特別に遣わされた道具」と評している点です。彼にとって先住民は、時に脅威であり異質な存在であると同時に、神の摂理を体現する存在でもありました。つまり『プリマス開拓史』における先住民の描写は、単純な「敵か味方か」という二分法ではなく、恐怖と感謝、警戒と信頼が入り混じった複雑なものなのです。
まとめると、上陸直後の時点では先住民との直接交流は描かれないものの、その後の記述においては、サモセットやスクワントとの出会い、そしてマサソイトとの同盟が、植民地の存続を左右する重大な出来事として丁寧に記録されています。