アドミラル・クズネツォフとは

「アドミラル・クズネツォフ」(正式名称:ソ連邦艦隊元帥クズネツォフ号)は、ロシア海軍の旗艦を務める航空母艦です。当初はソ連海軍向けに建造され、艦名は「リガ」「レオニード・ブレジネフ」「トビリシ」と変遷しました。クズネツォフ級(Project 1143.5)のネームシップとして計画されましたが、同型艦「ヴァリャーグ」は就役することなくウクライナから中国へ売却されています。艦名は、第二次世界大戦中にソ連海軍を率いたソ連邦海軍元帥ニコライ・ゲラシモヴィチ・クズネツォフにちなんでいます。
建造経歴
- 発注:1981年3月3日
- 起工:1983年2月22日
- 進水:1985年12月5日
- 就役:1991年1月21日(本格的な実戦配備は1995年)
- 現状:運用中
主要諸元
- 艦種:航空母艦
- 全長:302m
- 全幅:73m
- 吃水:11m
- 排水量:基準43,000トン/標準53,000〜55,000トン/満載66,600〜67,500トン
- 速力:32ノット
搭載機と航続性能
搭載機数は41〜52機で、標準的な編成は以下の通りです。
固定翼機
- Su-33艦上戦闘機 ×12
- Su-25UTG/UBP ×5
ヘリコプター
- Ka-27LD32 ×4
- Ka-27PLO ×18
- Ka-27S ×2
航続距離は32ノット巡航で約7,100kmに達します。
乗員と建造・母港
- 乗員:約1,960名(うち航空要員626名)
- 建造所:黒海造船所(ウクライナ・ニコラーエフ)
- 母港:セヴェロモルスク
姉妹艦「ヴァリャーグ」の波乱の生涯
クズネツォフとその唯一の姉妹艦ヴァリャーグは、ウクライナのニコラーエフにあるノセンコ造船所で設計されました。ヴァリャーグは1993年に建造が中断された時点で完成度70%にとどまっており、2000年6月にマカオの中国企業へ売却されました。表向きは「海上カジノへの改装」が名目でしたが、実際の目的は空母の取得でした。
トルコは航行安全上の理由から、ボスポラス海峡とダーダネルス海峡の通過を長期にわたって拒否。そのため曳航には627日もの歳月を要し、2002年3月3日にようやく中国・大連へ到着しました。その後大連造船所で改装工事が進められ、中国海軍色に塗り直された同艦は2011年8月10日に初の海上試験を実施。当初は「施琅(シーラン)」と呼ばれましたが、最終的に「遼寧」として中国海軍初の航空母艦として就役しました。
航空運用体制
固定翼機
対地支援任務はSu-25TM/Su-39が担当し、要撃任務はSu-33、将来的にはMiG-29Kが担う計画でした。1993〜94年にはSu-33単座型24機と複座型Su-33UB 1機が引き渡されており、これらは2013年から2015年にかけてMiG-29K 24機へ更新される予定でした。
ヘリコプター
- Ka-27LD32 ×4
- Ka-27PLO ×18
- Ka-27S ×2
兵装体系
砲熕・近接防御兵器
- AK-630 30mmCIWS ×8(毎分6,000発/基、備砲24,000発)
- CADS-1近接防御システム ×8(30mmガトリング砲2門+短距離SAM 16発)
- カシュタンCIWS(砲・ミサイル複合システム):ミサイル256発、砲弾48,000発、射程0.5〜1.5km
ミサイル
- P-700グラニート長距離対艦ミサイル ×12
- 3K95キンザル艦対空ミサイルVLS 8連装×18基(垂直発射192発、3秒間隔で発射可能)
対潜兵器
- RBU-12000 UDAV-1対潜ロケットランチャー ×2(ロケット弾60発)

近年の運用動向
2014年、北大西洋での任務を終えて帰還する際、クズネツォフ空母打撃群は異例の航路を選択しました。イングリッシュ海峡(英仏海峡)を通過し、オランダの排他的経済水域の縁に沿って航行して母港へ戻ったのです。この動きはNATO各国の警戒を引き起こしました。
また、MiG-29Kフルクラム戦闘機24機の配備により、今後の航空運用能力向上が期待されていました。
ロシアの将来空母計画とその課題
ロシア海軍は2020年頃を目処に2隻目の航空母艦を建造する計画を発表していました。目標は、太平洋艦隊と北方艦隊のそれぞれに空母打撃群を保有すること。さらに長期的(20〜30年後)には、各打撃群あたり3隻、合計6隻の空母を保有することが構想されていました。
しかしながら、この計画の実現性に対しては多くの専門家やメディアが強い懐疑を示しています。
技術面の課題
第一に技術力への疑問です。ロシア海軍当局自身、計画中の新型空母の技術水準が十分に現代的ではないことに不満を抱いているとされます。複数の専門家は、ロシアには必要な技術が不足しており、そもそも国内のどの造船所も近代的な航空母艦を建造できる能力を持っていないと指摘しています。
財政面の課題
第二に資金面の問題です。空母本体の建造費に加え、完全な航空団を整備する費用まで含めると、プロジェクト全体のコストは約300億ユーロに達すると推定されており、これを賄えるのかが大きな焦点となっています。