スイフトリバー計画の始まり
クアビン貯水池の歴史は、20世紀初頭にさかのぼります。当時、ボストン市は深刻な水不足に直面していました。急速な人口増加により水需要が供給能力を上回り、既存のサドベリー貯水池とウォチェスター貯水池はすでに限界に達していたのです。
こうした状況を受けて、1926年、マサチューセッツ州議会は同州最大となる人工貯水池「クアビン貯水池」の建設を承認しました。この貯水池は、コネチカット川の支流であるスイフト川をせき止めて造られることになります。
貯水池の建設は、まさに一大プロジェクトでした。全長約305メートル(1,000フィート)におよぶアースダム(土の堤防)の建設が必要だったほか、貯水池によって水没する複数の町や村からの住民移転も行われました。さらに、貯水池からボストンまで水を運ぶため、約32キロメートル(20マイル)に及ぶ導水管の建設も実施されました。
移転を余儀なくされたコミュニティ
クアビン貯水池の建設は、立ち退きを迫られた地域社会に深い傷を残しました。いくつもの町や村が放棄され、住民たちは新たな土地への移住を強いられました。中でも貯水池の最奥部に位置していたダナ町は、完全に水底へと沈んでいきました。
故郷と共同体を失った人々の心には、長く消えることのない喪失感と悲しみが刻まれました。その体験から完全に立ち直れなかった人もいたほどです。
クアビン貯水池が果たす役割
現在、クアビン貯水池はボストン都市圏にとって不可欠な水源となっています。200万人以上の人々に水を供給しており、マサチューセッツ州にとっても重要な収入源の一つです。また、釣り、ボート遊び、ハイキングなどが楽しめる人気のレクリエーションスポットとしても親しまれています。
クアビン貯水池は、20世紀初頭にボストンが直面した課題と、安定した水供給を確保するために払われた多大な犠牲を今に伝える存在です。同時に、この巨大な貯水池を築き上げた先人たちの優れた技術力と建設能力を証明する記念碑ともいえるでしょう。