古代の歴史

北欧神話に描かれた世界の始まり──原初の空虚「ギンヌンガガプ」から創世へ

世界は「ギンヌンガガプ」から始まった

北欧神話によれば、世界の始まりは、広大で何もない空虚な空間「ギンヌンガガプ(Ginnungagap)」でした。

二つの世界の誕生

ギンヌンガガプの中央には、やがて二つの世界が現れました。北側にあるのは、冷たく氷に閉ざされた世界「ニヴルヘイム(Niflheim)」。そして南側には、灼熱の炎に包まれた世界「ムスペルヘイム(Muspelheim)」です。

ニヴルヘイムからは氷の河が流れ出し、ムスペルヘイムからは溶けた熔岩の流れが溢れていました。

氷と炎の出会いが生んだもの

この二つの正反対の要素がぶつかり合うと、霧が発生します。霧はニヴルヘイムの冷気に触れると霜となり、ムスペルヘイムの熱気に触れると熱い蒸気へと変わりました。

最初の生命体──霜の巨人ユミル

こうして氷と火の交わりの中から、最初の生命体である霜の巨人ユミル(Ymir)が誕生しました。ユミルは強力な力を持つ原初の存在で、牝牛アウズンブラ(Auðumbla)の乳を飲んで命を繋いでいたと伝えられています。

牝牛アウズンブラと神々の祖ブーリ

実はアウズンブラ自身も、溶け出した氷の中から現れた存在でした。彼女は氷塊に付着した塩を舐め続けるうちに、徐々に一人の人影を姿を現していきます。それこそが、神々の祖となるブーリ(Búri)でした。

ブーリは後にオーディン(Odin)、ヴィリ(Vili)、ヴェー(Vé)という三人の神々の父となります。この兄弟たちはやがて、世界とそこに住まうすべての存在を創造することになるのです。