ビクトリア朝時代(1837年〜1901年)は、平均寿命が現代よりはるかに短く、50歳を迎える前に亡くなる人も少なくありませんでした。出生時の平均寿命は40歳前後とされていますが、これは乳幼児死亡率の高さが大きく影響しており、成人まで生き延びれば60〜70歳まで生きる人もいました。
平均寿命が短かった主な要因
- 劣悪な衛生環境:都市部は過密で不衛生な状態が続き、下水道が未整備のため路上に汚水が流れることも珍しくありませんでした。その結果、コレラ、腸チフス、天然痘といった致死的な感染症が頻繁に流行しました。
- 医療知識の限界:当時の医師は医学的な理解が限られており、時代遅れの治療法に頼ることが多かったため、現在なら予防や治療が可能な病気でも命を落とす人が多くいました。抗生物質もまだ存在していませんでした。
- 栄養失調:貧困層を中心に栄養状態が悪い人が多く、病気への抵抗力が弱い状態でした。
- 高い乳幼児死亡率:下痢や肺炎などの病気により、乳児や幼児が亡くなるケースが非常に多く、全体の平均寿命を大きく押し下げていました。
ビクトリア朝時代の主な死因
- コレラ:激しい下痢と嘔吐を引き起こす細菌感染症です。清潔な飲み水と衛生設備の不足により広まり、19世紀にロンドンなどで大流行しました。
- 結核:肺に感染する細菌性疾患で、当時「白色疫病」とも呼ばれました。特に若い世代の主要な死因の一つでした。
- 天然痘:発疹と高熱を伴うウイルス感染症です。種痘の普及が進むまでは非常に一般的な病気でした。
- 腸チフス:発熱、下痢、嘔吐を引き起こす細菌感染症で、汚染された食品や水を介して感染しました。
- 肺炎:肺の感染症で、幼児や高齢者にとって特に危険な病気として、多くの死者を出しました。
現代との比較
衛生環境の改善、公衆衛生の発展、医療技術の進歩により、ビクトリア朝時代以降、平均寿命は劇的に延びています。現在のイギリスでは、女性の平均寿命は約82歳、男性は約79歳に達しており、ビクトリア朝時代とはおよそ倍近い差があります。