私たちになじみ深い「ファラオ」という言葉。しかし、古代エジプトの全時代を通じて、この言葉が王の称号として使われていたわけではありません。実は「ファラオ」には興味深い変遷の歴史があるのです。今回は、この言葉がどのように誕生し、いつから王そのものを指すようになったのかをひもといてみましょう。
「ファラオ」の語源は「大きな家」
「ファラオ」の語源は、古代エジプト語で「大きな家」を意味する「ペル・アア(pr-ʿ3)」という言葉です。当初、この言葉は王個人ではなく、王の住まう宮殿そのものを指して使われていました。中王国時代ごろには、すでに王室や宮廷を表す表現として文書に登場しています。
王を指す尊称になったのは新王国時代
「ペル・アア」が宮殿ではなく王本人を指す言葉として使われ始めたのは、紀元前15世紀以降、新王国時代(第18王朝)に入ってからのことです。特にトトメス3世やアクエンアテンの治世(紀元前14世紀頃)の文書には、「ファラオ――命と繁栄と健康あれ!」といった定型句が見られ、王への敬称として次第に定着していきました。
ギリシャ人と聖書によって世界へ広まる
その後、紀元前1千年紀に入ると、エジプトと交流を持ったギリシャ人たちが、エジプトの王を「ファラオ」と呼ぶようになりました。さらに、旧約聖書のモーセや出エジプトの物語において、エジプト王が繰り返し「ファラオ」として登場したことから、この言葉は広く世界に普及しました。
まとめ
「ファラオ」という言葉の歴史を整理すると、以下のようになります。
・語源は「大きな家」を意味する古代エジプト語
・当初は「王宮」を指す言葉だった
・新王国時代(紀元前14世紀頃)に王の尊称として使われ始めた
・ギリシャ人や聖書を通じて、エジプト王一般を指す名称として世界的に知られるようになった
つまり、「ファラオ」はエジプト生まれの言葉でありながら、王の称号としては比較的遅く、しかも段階的に確立していったのです。