中世の西洋で使われていた代表的な書体が、ブラックレター(Blackletter)、別名ゴシック体(Gothic)です。この書体は、西ヨーロッパにおいて中世からルネサンス期にかけて広く用いられ、地域によっては18世紀まで使用され続けました。
「ゴシック」という名称の意味
「ゴシック」という言葉は、ヨーロッパ中世の書き文字全般を幅広く指す場合もありますが、特に1150年頃から1500年頃に流行した後期の「尖った(pointed)」スタイルの書体を指すことが一般的です。この時期は大聖堂建築などが花開いたゴシック美術の時代と重なり、書体にもその時代精神が反映されています。
ブラックレターの主な特徴
ゴシック体には、以下のような際立った特徴があります。
・角ばって鋭く尖った字形
・装飾的で精緻な筆画
・複雑な合字(リガチャー)や省略記号の多用
これらの特徴により、ゴシック体は縦画が太く横画が細い、独特の密度の高い外観を持っています。紙面全体が黒っぽく見えることから「ブラックレター(黒い文字)」とも呼ばれるようになりました。
歴史とその後の影響
ゴシック体は、カロリング朝の小文字(カルオライン・ミナスキュール)を簡素化し、速記性を高めることで生まれたと考えられています。15世紀にグーテンベルクが活版印刷技術を発明した際も、『四十二行聖書』の印刷にこの書体が用いられるなど、初期印刷文化とも深い関わりがありました。
その後、ルネサンス期にローマン体(セリフ体)が主流となりましたが、ドイツ語圏ではフラクトゥール(Fraktur)などのゴシック系書体が長く親しまれました。現在でも、新聞の題字や看板などでゴシック体風の書体を目にすることがあり、中世の書体は現代のデザインにも息づいています。