インカ文明が栄えたのは、南アメリカ大陸です。その中心となったのは、標高3,000メートルを超えるアンデス山脈一帯であり、首都クスコ(現在のペルー)を拠点として帝国が築かれました。
広大な領土を誇った「タワンチンスウユ」
インカ帝国は、自らの国を「タワンチンスウユ(4つの州が集まる地)」と呼んでいました。15世紀から16世紀初頭にかけて最盛期を迎え、その領土は現在の以下の国々にまたがる広大な範囲に及びました。
- ペルー — 帝国の中心地であり、首都クスコやマチュ・ピチュがある
- ボリビア — ティティカカ湖周辺が重要な地域だった
- エクアドル — 北部の要衝キトも支配下に置いた
- チリ — 領土の一部が南部まで伸びていた
- アルゼンチン — 北西部の山岳地帯に勢力を広げた
険しい山岳地帯で発達した文明
インカ文明は、峻険なアンデス山脈という過酷な環境の中で高度な文化を発展させました。段々畑による農耕、石積みの精緻な建築技術、そして延べ数万キロに及ぶ道路網「インカ道」は、山岳帝国を支える大きな柱となりました。文字を持たなかったものの、「キプ」と呼ばれる結び紐による記録管理を行っていたことでも知られています。
このように、インカ文明は南米大陸の太平洋岸から高地まで、南北約4,000キロにわたって影響力を及ぼした、プレ・コロンブス期最大の文明でした。